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南宋絵画に見た 所蔵者の誇り
 5月2日の朝、NHKの「新日曜美術館」をつけてみたら、日本画家の高山辰雄さんが東京の根津美術館の床の上に座り込んで、開催中の特別展「南宋絵画」(5月16日まで)の出品作品に見入っていた。「無限の世界があるね。現実とかリアルとかいうけれど、もうひとつ先にあるね」。心底作品に魅せられている様子だ。前期の最終日だったこともあって、さっそく見に行った。

伝李安忠筆 国宝「鶉図」(根津美術館蔵)
伝李安忠筆 国宝「鶉図」(根津美術館蔵)。日本人の美意識形成に大きな影響を与えた南宋絵画
 何というこみ方。とくに伝李安忠筆「鶉(うずら)図」、徽宗筆「桃鳩図」、牧谿筆「漁村夕照図」の前は大変な人だかりだ。単眼鏡をじっとのぞいている人。時折、中国語や英語が耳に入る。動く気配がない。そのうち、「絵の前で立ちどまらないで下さい」という大きな声が聞こえた。根津美術館でこんな言葉を耳にするのも珍しい。

 この展覧会は実に密度が高い。「東山御物」として珍重されてきた南宋絵画の傑作をこれだけまとまったかたちで見たのは初めてだ。今日、中国にも台湾にも質の高い南宋絵画はほとんど残っていないという。出品作品には、室町時代以来連綿と受け継がれてきた南宋絵画に対する日本人の愛情が凝縮されている。

 出品作品の所蔵者欄には、根津をはじめ、五島、出光、徳川などと、名門私立美術館が名を連ねる。そこにはコレクターの誇りと執念がにじみ出ている。お金のことは別として、公立美術館が作品収集にここまで情熱を傾けられるか否か、考えさせられる。翌日、後期の初日にも行った。私はやはり「鶉図」が好きだ。

(横浜美術館館長 雪山行二)

〜2004年5月13日付 朝日新聞(東京本社)夕刊「マリオン」から〜

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