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美の経済学タイトル
一目おきたい 図書館の活動
 先日、神奈川県図書館協会の総会で、「曲がり角に立つ美術館」と題するおしゃべりをさせていただいた。私の友人のなかには、本をまたいで歩けないとか、極端な例としては新聞さえまたげないという変人までいる。私はそのようなフェティシズムをもち合わせていないが、それでも本を踏み台代わりにしたりはしない。陰ながら図書館の崇拝者を自負している。

横浜美術館美術図書室
横浜美術館美術図書室。蔵書数約8万冊。年間約1万5000人の利用者がある
 昨今、「美術館はどこへ行く」といったテーマが話題になる。美術館をアミューズメント・センターに近づけようという意見をよく耳にする。美術館は楽しいところでなければならない。そのとおりだと思う。美術館はレストランが重要だ(みな同じことを言う)。同感である。いい展覧会を見たあと美術館のレストランで、ワイングラスを片手にカタログのページをめくるのは快い。

 しかしその一方で、美術館は図書館に近づけないものかと思う。大げさに言えば、どちらも人類の知的財産を集積し、それを生活のなかに生かし、新たな創造を呼びおこすために存在する。さすがに図書館は長い歴史をもっているせいか、設置者も職員も利用者も(受験勉強のための自習室とか無料の貸本屋と思っている人もいるが)、その使命については合意しているように見える。残念ながら、その点でいっこうに腰が据わらないのが美術館ではないか。

 おしゃれでファッショナブルな美術館を目指すのもよいが、時には図書館の地道な活動を思い出したい。

(横浜美術館館長 雪山行二)

〜2004年5月27日付 朝日新聞(東京本社)夕刊「マリオン」から〜

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