母の笑顔に支えられ
4年間寝たきりだった父が亡くなって3カ月。その間、ずっと介護をし続けた母がさびしいんじゃないかと、久しぶりに奈良の実家を訪ねた。すると、ドアが新しくなっている。「ええやろ、このドア。気分転換にドアを新しくしたんや」。父がずっと寝ていたベッドはもうない。「あれは、レンタルやったさかいに、返したんや。介護用のベッド、レンタルにしておいて良かったわ。処分するとなったら大変やわ」
キッチンには、見たことのないエスプレッソマシンがある。「これでコーヒー入れてあげたら、訪ねて来る人みんな喜ぶねん。これはミルクのホイップマシン。牛乳入れたら、数分でホイップクリームになるねん」。なんと優雅に過ごしてるんだろ。「ひとりで、悶々(もんもん)としてても、パパが生き返るわけじゃないし、今まで介護ばっかりしてたから、ちょっと優雅に過ごそうと思って」
壁掛けのカレンダーを見ると、その日は「正樹(私の弟)家族と旅行」。それから、次は、「弘樹(もうひとりの弟)家族と旅行」と書き込み。「他にもいっぱい約束があって、ゆっくりしてられへんわ」。元気そうで良かったと、ホッとする。やっぱり、女性は強いなあ。
夜中の3時に目が覚めてハッとした。母がまだ起きている。「まだ、起きてるの?」と尋ねた私に、笑いながら母から返ってきた言葉。「夜中になると、パパを思い出してしまうねん」
母は、精いっぱい、私たちに元気なふりをしていた。「しみじみしていると、みんなに嫌われるから」。確かに、じめじめした母の姿は、私たち兄弟も家族も見たくない。「インターネットやってたら、夜中でも飽きないわ。見てみ。あんたのブログも『お気に入り』に入れてるで」。そう言って笑っている母のココロの元気に、私たちは本当に救われているんだと実感した。
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| 題字・イラスト ながた かず |