余裕が一番の防止策
多くの企業が、安全意識の向上のために講習や研修、講演会を開催している。そして私も、よく講師として呼んでいただく。
誰だって、事故なんて起こしたくないし、巻き込まれたくない。けれど悲しいことに、いろんな事故がいろんな場所で起こる。そして、それは耐え難い悲しみになったり、心や体の一生の傷になることだっていっぱいある。
大学生だった時、家に帰ったら、祖母が血相を変えて出てきた。「お父ちゃんの病院のマイクロバスが事故を起こした」。足が震えたのを今でも覚えている。大学病院で働いていた父は、私が18歳の時に開業した。ところが大学病院時代の患者さんたちは、どうしても父に「完治するまで診て欲しい」と、父の開業に反対した。仕方なしに、父は離れている患者さんのために送迎バスを出すことにした。昔からの患者さんたちはとっても喜んでくれた。そのバスを運転していた伯父が、対向車を避けようとして左に寄ったところ、雨でぬかるんでいた路肩が崩れて、川にはまったのだ。
ひょっとしたら、あの時、伯父に対向車の前で車を待つ余裕があれば、事故は防げたかもしれない。たくさんの方に迷惑をかけた。父も伯父も母も、事故に遭われた方たちを毎日見舞い、誠心誠意謝る日々が続いた。ありがたいことに、事故に遭った方たちが、そんな両親や伯父を許してくれた。事故という一瞬の出来事によって、被害者も加害者も、今までの生活が大きく変わることを目の当たりにした。
あれから20年。父ももう、この世にいない。けれど、そんな経験があるからこそ、私は「安全」と「ココロの余裕」にこだわっている。1人も事故の被害者、加害者になって欲しくない。だからこそ多くの人に、普段からココロを元気にして、ココロの余裕を持って欲しい。
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| 題字・イラスト ながた かず |