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2008.9.4(木)更新  大谷由里子のココロの元気

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  じっとやりすごす

 長い人生、どうしようもない時だってある。そんな時、ジタバタしても仕方がない。「とにかくやりすごす」というのも一つの手。

 友人のアナウンサーの話。「台風の取材に行った時、中継車を堤防でとめて取材していたら、本当に身動きできない状態になったの。雨風はどんどん強くなる。でも、恐ろしくて車を動かせない。『とにかく、ここで、台風の勢力が落ち着くまで待とう』とスタッフ全員、車の中でじっとしているしかなかった。台風が弱まることを神様に祈るしかなかった。あの時、本当に『やりすごすしかない』という気持ちを心底実感したわ」

 私の父は、医者だった。内科医で、たくさんの重病の患者さんを抱えていた。患者さんも人間。末期がんだった患者さんは「どうして治らないんだ」と、医者や看護師さんに当たることが多々あった。「末期のがんで、もう治りません」なんて言えたら、どれだけ楽か。でも、死んでもそんなせりふは言えない。患者さんも薄々、自分の症状を気づいているだけにつらい。父は、ただただ、患者さんの気持ちが収まるまで、やりすごしていたんだと思う。

 自宅に帰ってから、父は家族に当たり散らした。今まで兄弟で遊んでいたのに、いきなり「部屋が散らかっている」とか「お前たちは努力が足りない」とか、理不尽に怒鳴られた。それがしょっちゅうだったので、私たち兄弟は、父の怒りが収まるまで、とにかくやりすごしていた。

 いつもご機嫌で、ココロが元気で、楽しくすごすことができたら、こんなにステキなことはない。けれど、生きていたら、とんでもないこと、理不尽なこともいっぱい起こる。動いて解決するなら動けばいい。でも、動いてもどうしようもない時、動けない時、「とにかくやりすごす」ということも、とっても大切。

題字・イラスト ながた かず

 大谷由里子/1963年、奈良県生まれ。吉本興業マネージャーを経て、人材活性プロデューサー。「笑い」を取り入れた人材育成が話題に。
 
(2008年9月4日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)
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