最後に頼れるは自分
人は肝心な時に助けてくれない。というより、助けたくても、どうしようもない場合もある。そうなると、最後まで頼れるのは自分自身。いざという時は、自分で何とかするしかない。人をあてにせずに、「自分のために動いてくれたらラッキー」というくらいの覚悟ができている人は強い。
20数年前、18歳で医者を目指していた弟が受験に失敗した。「一年くらいはいいか」で始まった浪人生活。しかも、一浪の時は友達もたくさんいる。ところが、次の年も失敗。家族は「二浪することもあるよね」と言ってみたものの、きっと本人はつらかったんだろう。怠惰な生活が始まった。そして、次の年も失敗。弟は発表を見に行き、そのまま家に帰ってこなかった。今思えば強がりだったのだろうけれど、父は「あいつが出てきても家に入れない」と怒りまくり。
頼りの警察は多くの事件を抱えているからか、いちいち家出人を捜してくれない。そんな時、母は「私がやるしかない」と、写真を持って弟捜しを始めた。「予備校をさぼってよく競馬場に行っていた」と聞けば、競馬場通い。「この子知りませんか」と聞いて回った。そんな母を見て、予想屋のおじさんや競馬場のお客さんが弟捜しを手伝ってくれた。半年後に見つかった弟は、心優しい新聞販売所の方のもとで働いていた。
多くの人に感謝し、弟を連れて帰った。弟も家出し、いろいろな人に助けられたことで、家族すら手助けできない「受験」という環境に正面から向き合うことを決めたのだろう。素直に、自分より3歳年下の弟と一緒に受験勉強を始めた。今では医者になって地域医療に一所懸命。40歳を過ぎた今でも、医学を人一倍勉強している。
あの時、母が誰もあてにせず、自分の足と手で、自分の息子を捜し出したこと。私は今でもとっても尊敬している。
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| 題字・イラスト ながた かず |