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うふふナチュラルライフ

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頭の中には「自分だけの地図」     

     人に道案内などできませーん

イラスト・さかいひろこ

 旅番組の撮影中、突然、別のテレビ番組担当ディレクターから電話が入った。「実は今、那須でロケハン中なんですが、高木さんの畑の住所を教えていただけないでしょうか。場所を確認しておきたいので」

 ロケハンとはロケーション予定地をあらかじめ下見しておくことを言う。質問されて初めて気づいた。私、自分が借りている畑の住所を知らなかった。(そもそも畑や田んぼに住所ってあるの?)いつも“誰々さんの家の畑”とか“その三つ先の田んぼ”とか言って待ち合わせをしていたのだ。うかつだった。

 「わかりませーん」「−−では近くに目印になるような建物はありませんか」そんなものあるわけ無い。田んぼ、雑木林、また田んぼと、どこにでもあるような景色が続いているだけだ。都会じゃないんだから、○○ビルなんて建っているはずもない。標識も無い。申し訳ないが、次回は私が案内役をすることにして、その日はあきらめてもらうしかなかった。

 いつもこうなる。都会から来た人を電話で道案内するとき、本当に困るのだ。田舎は観光に使われる大きな道路に、農道や林道、私道が複雑につながっていて、地図に載っていない道もたくさんある。地元に長く住んでいる人は、そんな細道を上手に利用して観光シーズンの渋滞をすり抜けるのだ。そのうちそっちの道の方が使い勝手が良くなり、いつのまにか、とても他人には理解できない地図が頭の中にできあがる。××さんの別荘の角を左に曲がって、△△さんちの田んぼに突き当たったら、□□爺(じい)ちゃんの墓がある。その脇の畔(あぜ)の奥がうちの家だ。手前はお隣さんだから間違えんなよ、てな具合に。でも初めて訪れた人間には、その家もお隣さんも、同じ敷地の中に建っているようにしか見えないのだが。

 更に、田んぼなら農道から何枚目。イチゴのビニールハウスと指示された時には、イチゴなのかキュウリなのか、いちいち中をのぞいて確認しながら進まなければならなかったりと、細かい条件が付いて頭を悩まされることもある。「まるで獣道だろ」軽トラを運転しながら、そう言って田舎の人はよく笑う。もしかしたら自分だけの道が、ちょっとばかし自慢なのかもしれない。

(タレント・エッセイスト)

(2003年5月14日朝日新聞東京本社夕刊のマリオン紙面から)

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