まずトマトの受難が始まりだった。苗がやっとひざの高さを超えた6月はじめ、季節はずれの突風が一晩中吹き荒れ、翌朝には茎がくの字に折れていた。追いうちをかけるように、いつまでも冷たく長い梅雨が続き、かわいいトマトさんは、ついに病に倒れたのだった。
8月に入ってからは気温も上がり、ようやくお日様の顔を拝めるようになったが、これがまたやっかい。寒さと日照不足のあいだ、しっかりと根をはることのできなかった野菜たちは、いわば水ぶくれの状態で夏本番に突入してしまったのだ。人間だって疲れてヘロヘロになっている朝は、太陽が黄色く見えてしまうもの。野菜たち、さぞかししんどいことだろう。急な気温の上昇は病虫害を発生させやすくもする。あわてて畑と田んぼに竹酢液をまいたが、はたして効果はあるだろうか。稲はいもち病が心配だ。グスングスン、と泣きべそをかいているところに、またまたとんでもないことがおこった。
なーんと、山からお猿さんが下りてきて、野菜畑でピクニックを始めてしまったのだ。これまでも毎年あったが、今年は数が違う。目撃者の話では、100匹の大群だったそうだ。彼らはまず、大好きなトウモロコシから食べ始めた。親猿は子猿の手を引いては次々と実をもいで、皮をむいて、それはそれはおいしそうに食べていたそうな。ヒゲまでちゃんと取り除いていたそうな。ちなみにトウモロコシのヒゲのことを私の住む田舎では、トウミギのケンポコと言う。
次に手を伸ばしたのはスイカとカボチャ。きちんと葉っぱの下にかくしておいたのに、お猿さんは腰をかがめるとヒョイとめくって見つけてしまったそうな。その場でかじり始めたので大声で追い払うと、わきの下にごちそうをはさんでさっさと木に登り、枝に腰掛けて赤い顔でこっちを見ながら、またあぐあぐ食べ始めたそうな。今も畑には、大きな歯型のついたカボチャが落っこちている。ほぼ全滅の畑でキュウリとニンジンだけはなぜか無傷だった。
夕飯にそれをかじりながら、お猿もあちこちで追い回されたうえ、悪天候で山の食べ物も乏しいのだろうと思うと、怒るに怒れない気分の人間の私だった。
(タレント・エッセイスト)