稲刈りは友人たちの手を借りて、無事終了したが、さて翌日は刈り取った稲を天日干しする“はさがけ”作業が待っている。これをすると、お米に甘みが増し、香りもよくなるので絶対はずせない。みんなが東京に帰ったあと、地元の田んぼ仲間だけで行う大切な仕事なのだ。
農家の納屋にねむっていた棒杭(ぼうくい)をみんなで引っぱり出す。それを田んぼまで歩いて運ぶ。長いものでは山に生えていた青竹1本!なんてのもあるので、前と後ろで肩にかつぎ、まるで駕籠舁(かごか)きのように「えっほ、えっほ」と運ぶのだ。途中で広い道路を渡らなくてはならないのだが、最近では“はさがけ”も珍しくなったせいか、道行く車の運転手さんが窓から首を伸ばして「何やってんだぁ」と、のんきに声をかけてくることも。あまりに人の良さそうな顔をしているので、こちらもついなごんで、道の上で事情を説明すると「そりゃおかせぎだねえ」と言ってくれた。よく働くねえ、という意味の方言だ。田んぼで仕事中に尻もちをついた時も、知らないうちに顔が泥だらけになっていた時も、タオルでほっぺたをこすってくれながら、田舎のおばちゃんたちはこの言葉を言ってくれる。私はとってもうれしくなる。
気が付くと道路には車の列ができていた。追突事故が起きないうちに田んぼへ向かおう。
2本の杭を縄で縛り、そこに竿竹(さおだけ)を2段に渡して“はさ”を作り、次々に稲をかけていく。空模様があやしくなってきたので、まだ竿の端を杭に結わき終わらないうちに、慌てて反対の端から稲をかけ始めてしまった。それがよくなかった。バランスを失った“はさ”は、そのまま重い方にパタンと倒れ込み、その時メキメキッ!!と竹の折れる音がした。あーあ、せっかく刈り取った稲が泥だらけだよ。確か、おととしの米作りでも同じようなことがあったっけ。その時使っていた棒杭は、なんと納屋に20年もねむっていたものだったので、倒れると同時にボキボキとほとんどが折れてしまうという大骨折だった。みんなで思い出し、目の前の光景と見くらべて大いに笑った。ほんと、大したおかせぎの日だ。
(タレント・エッセイスト)