稲刈りからしばらくたってしまったが、今日はようやく脱穀の日。田んぼをお借りしている農家の納屋に行くと、すっかり乾燥した稲が無事に残っていた。おばちゃん曰(いわ)く「いつ盗まれるかと思ってヒヤヒヤしたよ」。米泥棒のせいで、余計な心配までしなくてはならない。それでなくても内心ドキドキの脱穀の日だというのに。
今年はどこも収穫量が少なくなっている。うちの田んぼの場合、特に今年は私の発案で、炭を使った手作り浄化装置を設置した。水口の下の地面に穴を掘り、そこに、山に捨てられていたゴミ用のバケツをおさめたのだ。バケツは割れていたので、針金でグルグル巻きにして修繕を加え、これだけでも一苦労だった。その中に、田んぼ仲間の兄貴が焼いた炭を、これまた捨てられていたネットに詰め込んで入れた。山のゴミ掃除を兼ねた農作業はとても楽しかったが、果たして苦労した分だけの収穫があがるかどうか心配だったわけである。
もともと浄化装置を思いついたのは、うちの猫のアレルギー対策のため、台所に浄水器をつけようとカタログをパラパラめくっていた時で、浄水のしくみを解説した図を見て、これのデッカイやつがあったら田んぼの水もきれいになるのかなあと、なんとなーく口に出してしまったのが始まりだった。それじゃあやってみようということになったはいいが、いざ手をつけてみると意外と手間のかかることに後で驚いたのだった。
田んぼ仲間はみんな私より年上で田舎暮らしの経験でも先輩ばかり。私はまだ彼らの半分ほどの作業しかできないし知識も無い。そんな私が初めて米作りについて提案らしきものをしたので、先輩たちは親心でそれを採用してくれたのだと思う。だから、いくら天候不順だったとはいえ、あまりに収量が減ったのでは責任を感じてしまう。ゴーッとうなるコンバインの後ろで藁(わら)を束ねながら、一つ一つ積み重なっていく袋の数がとても気になった。5、6、7……。結果は去年より1俵少なくて7俵。予想より多いかなと思ってみんなの顔を見回すと、埃(ほこり)の舞う中、マスクの下で笑顔が輝いていた。ホッと胸をなでおろした瞬間だった。
(タレント・エッセイスト)