女優という生き物にはいつも翻弄(ほんろう)される。女王様のようにわがままだったり、めちゃくちゃ気さくで優しかったり、やたら酒が強かったり男にだらしなかったり。様々な唖然呆然(あぜんぼうぜん)をスタッフに提供してくれる。そんな中でも特別なキャラの持ち主、「松坂慶子の真実」を暴露しようと思う。
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現在、某公共放送で放送中の大きな河の物語「義経」で平清盛の妻を凜(りん)と演じている松坂慶子はかなり凄(すご)い女なのです。まず、凄く美しい。しかしその美しさは容姿だけでなく、心は凄く純粋で魂はつるんとした少女の顔をしている。
こんなことがあった。私が初めて松坂慶子を体験した映画「カタクリ家の幸福」の現場での出来事だ。この映画は庶民派ミュージカルなもんですから、当然歌って踊るシーンがあるわけです。で、この大女優は振り付けを自分が納得できるまで凄い集中力で稽古(けいこ)するわけですよ。共演の沢田研二、武田真治、大御所・丹波哲郎と共に真剣勝負のリハーサルを重ねるわけだ。で、監督の私として「よし、本番行ってみよう」ってレベルに達した時、松坂慶子が食い下がる。
「すいません、皆さん。もう一度、もう一回だけ練習させて下さい。そしたらもっとうまく出来ると思うんです。お願いします!」
ワンカットたりとも妥協を許さぬ女優魂が撮影現場を揺さぶる。
「よし。もう一回!」
火のような最後の稽古に映画の神が舞い降りる。震える声で私は叫んだ。
「素晴らしい。本番だ!」
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と、その瞬間、松坂慶子が崩れ落ちた。
「……ごめんなさい。私、もう体力の限界です。両方のふくらはぎがつっちゃいました。だからもう立てないと思います」
凄い、凄いぞ松坂慶子!
今日は撮影中止だ。な〜に、明日は明日の風が吹くさ。