のどスプレーに、うがい。水をのんで、塩をまいて、ご先祖様にお祈り。これが本番前の僕の習慣です。しかし、5年前の平成中村座の試演会の本番前のこと、あの時は緊張のあまり、うがい薬を飲み込んじゃいました。
小さい時からあこがれていた「道行初音旅」の忠信役。静御前役は弟(七之助)で、兄弟で出来るのが楽しみって思っていたら、本番1週間前になって突然、父(勘三郎)が「俺がやるっ」って。この演目は忠信が踊っているのを、すぐ後ろで静がずっと見てる。父に見られてるって思うだけで……。
この「道行初音旅」は「義経千本桜」の中の話の一つ。義経が静に預けた「初音の鼓」には夫婦のキツネの皮が使われている。その親を慕って子ギツネが義経の部下・忠信に化けて静と一緒に旅をする。千回の稽古より1回の本番と言われますが、忠信にとって静は主で自分が従なんだっていうことを、父と舞台で演じてみて初めて、頭ではなく体で分かった気がしました。
ごく最近では、3月に三谷幸喜さんの「決闘! 高田馬場」に出演していました。毎日楽しくて仕方がない。でも、これはまだ思い出にはしたくない。これから色々なものを吸収して消化してもっともっと前に進んでいきたい。いつか、これが僕の思い出の仕事! と言えるように。
〈談〉
(2006年4月6日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)