石橋をたたいてみて、ダメだと思っても渡ってしまう−−。そんな僕ですから、私生活の小さな失敗やケガは数え切れませんが、一番の失敗は今回のヒザのケガ。4歳から20年間舞台に立ち続けて、休演するのはこれが初めてです。ご迷惑とご心配をおかけしました。
博多座でのけいこ中から左ヒザの痛みを感じていたのです。いつも以上にストレッチやケアをしっかりしたつもりが、左ヒザをかばうあまり、以前手術をしたことのある右ヒザをまた痛めてしまいました。その時の演目は「雨乞狐(あまごいぎつね)」。「義経千本桜」の源九郎狐の子孫が、日照りで困っている人間のために、雨乞いをする舞踊劇です。幕が上がったばかりなのに、ヒザに力が入らない。それでもなんとか踊り抜きましたが、悪化してとうとう手術になりました。絶対安静ですが、1日けいこを休むだけでも筋肉は衰えるので、手術の翌日には点滴を打ちながらリハビリ開始。悪いところは小さなパーツ一つだけで、他はどこも悪くないのに、舞台に出られないのが本当に悔しい。あー、新しいヒザがほしい!!
ただ、この失敗のおかげ(?)でしょうか、励ましのお手紙を下さるファンの方々の温かい気持ちが、こんなに心にしみたのは初めてでした。みなさんに安心して見ていただけるように、ゆっくりきちんと治して、また舞台に立ちたいと思います。
〈歌舞伎俳優〉
(2006年8月3日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)