今回のテーマ、参りました! だって失敗だらけの人生ですもの。ことにお酒がめっきり弱くなった昨今、昔とったきねづかで飲むペースを飛ばしてしまい、2人の息子達(たち)に心配かけるわヒンシュク買うわ呆(あき)れられるわで……。夜更け12時を過ぎると長男から「まだ飲んでるのぉ?」と警告電話が入るシンデレラ。12時を回ると、馬車ではなくシンデレラの方が、どよぉ〜んとかぼちゃに変身! あ〜あ。
昔話を一つ。四谷に「F」というバーがありました。初めて連れて行ってくださったのは、劇評家の戸板康二先生。常連は劇作家、翻訳家、舞台制作者……、温厚な紳士達がカウンターに並び、たわいもないシャレを応酬しては「クックックッ」と笑い合う文化サロンは、いつも賑(にぎ)わっていました。
初めてその店に入った時、若輩者の私は緊張して「なんだか演劇界の『うずちゅう』にいるようで……」と呟(つぶや)いたのです。「うずちゅうはいいねぇ〜」大きな体の劇場支配人が面白そうに笑って。「ゲッ! カチュウだ!」言ってから気が付いたのでした。でも優しい知識人の集まりはそれを新鮮に楽しむかのように、柔らかな笑いで包んでくれました。
上品なウイットを肴(さかな)にグラスを傾けていた素敵(すてき)な大人達。それから30年近い時が流れ、もう私も立派な大人の筈(はず)なのに、いまだに、大人の酒をたしなめません。何やってんだか……。はぁ〜。
〈女優〉
(2006年8月24日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)