小学2年生の時の作文には「花屋になりたい」と書いてありました。理由は全く覚えていませんが、僕のことです、当時花屋にきれいなお姉さんがいたからなのでしょう。
考えてみれば、ものごころがついた時からずっと歌舞伎がそばにありました。だから、もし違う職業に就いていたら……ということが全く想像が出来ないのです。でも、あえて想像すると、得意かもしれないと思う職業が二つあります。
まずは「営業」。謝るのが得意です。久しぶりの休日、友人と飲みに行く予定が重なってしまうことがありました。両方一緒の店にして行ったり来たり――、という器用なことが出来ないので、泣く泣く一方の約束を断るしかありません。電話で謝りながら、「本当に申し訳ない」「行きたいんだけど……」という思いが声と話し方で伝わるのか、見かねて友人が「無理しなくていいよ」と許してくれることも。あと、絶対にNOと言わない。出来ますと言ったからには自分を追い込んでやり切ります。
もう一つは、マネジャー。役者をやる気にさせてどんどん仕事を取って来ます。役者との信頼関係を育んだり、気配りしたりするのは向いているのかもしれません。ただし、僕のマネジャーにだけは絶対になりたくない。だって、わがままだし、何考えてるか分からないし、朝起きないし……。
〈歌舞伎俳優〉
(2006年11月2日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)