妊婦になった時、いっぱい出来た自由時間がすごくうれしくて、英会話レッスンを始めました。そして勉強し始めて「しまった!」と思いました。子供を持つ前に海外をさまよっておけば良かった……と。とは言え実際のところ、舞台や映像の仕事など毎日が無我夢中で楽しくて、子供を持ちたいと30歳で決意するまで、少しの期間でも俳優業を休もうなんて、考えたこともありませんでした。そして今、息子たちも成人し、親もなんとか元気で、事務所は私の生き方を理解し寛容に受け止めてくれている。あとは私の決意次第。そう、今なら長期休暇だって、夢じゃありません。
世界中行きたい都市は数々……。それでも、何カ月も仕事から離れてしまう気にはやっぱりなれないのです。むしろ、私が切望しているのは、長期間ひとつの仕事に拘束されたい!と正反対。携帯電話もつながらないようなへき地で、スタッフと寝食を共にしながら一つの作品に向き合う。そんな仕事がしたくて仕方ありません。もの創(つく)りのテンポがどんどん早くなって、ましてバイプレーヤー(助演者)としての需要が多いと、あっちの現場、こっちの現場と慌ただしく渡り歩くような、時にはちょっと現場を覗(のぞ)くだけで帰って来てしまったような、そんな寂しさがあります。
人生の秋、休むより紅葉のように燃え上がりたいと、まだまだ強欲な私なのでした。
〈女優〉
(2006年12月21日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)