ハナっから負けてる勝負なのに「負けるもんか」と格闘し続けている壁があります。
方言です。
その土地のにおい、ぬくもり、生活感、人物のリアリティーを一気に醸し出してくれる強力な味方の半面、地元の方にも納得してもらえる自然さに達するのはなかなか……。そしてもちろん、言葉に自分の感情を添わせて初めて演技になるのですから、だからこそ、方言は努力するかいもあります。撮影現場で、監督の「OK」よりも、方言指導の方から「今の完璧(かんぺき)!」と言われる方が最高にうれしい。あら? これでは本末転倒かしら?
在韓の韓国人役で日本語の台詞(せりふ)を言うシーンの時は最初途方にくれました。韓国語を教えてくれる人はいますが、韓国なまりの日本語を教えてくれる人はいないから。でも色んな音源から特徴を取り出したり、在日の友人の力を借りたり、一からの作業は楽しくもありました。
今、私は久留米で「Watch with Me〜卒業写真〜」という映画撮影中で、初体験の久留米弁と格闘中です。今まで何度か経験してる博多弁との違いを模索しています。「長浜ラーメンと久留米ラーメンのとんこつスープの違いと共通だな」なんぞと味になぞらえ、情の深さを感じさせるネイティブ久留米人になりきれますかどうか……。乞(こ)うご期待。
〈女優〉
(2007年2月22日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)