子供の頃、母から渡された漫画といえば「冒険ダン吉」と「のらくろ」という私が、初めて「ドラえもん」を目にしたのは小学校2年生の時でした。お友達の家のお泊まり会で、当時から寝つきの悪かった私に友人が貸してくれたのが最初でした。初めて触れたドラえもんの衝撃と感動はものすごく、全部読み終えた時は夜が明けていたのを思い出します。その日以来、ドラえもんは私の「心の友」となったのです。毎日何回も何回も繰り返し読み続け、いつしか最初の4コマを読んだだけで何の道具がでてくるかわかるまでになりました。
そんなある日、なんと本家本元の藤子プロから取材の依頼が! どんな方が私の愛するドラえもんを支えてくれているのか、胸をときめかせてお会いしたところ、なんとその女性は「ジャイ子」(ジャイアンの妹で自称漫画家)のペンネームも知らないじゃないですか! 「そんな初歩的なことも知らないのか! クリスチーネ剛田でしょ!」と息巻く私に、その女性も急に真顔になり、「じゃ、ジャイ子の代表作は?」という鋭い切り返し。悔しい、思い出せない……。と、すかさず自慢げに「ペロペロキャンディキャンディですよ」。その大勝負を終え、お互い妙な達成感と敗北感が入り乱れ、私は自分の詰めの甘さを反省し、もう一度全巻読み直したのでした。今度会ったら絶対にする質問は決まってるんだ。「スネ夫の弟の名前は?」
〈バイオリニスト〉
(2007年3月1日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)