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2006.1.25(木)更新  日本音紀行 もうひとつの風景

函館ハリストス正教会
(北海道函館市)

異国の旋律、時を越えて
高い鐘楼とタマネギ型の冠が特徴の聖堂。夕焼け空に月が見えた。左はカトリック元町教会=上田頴人撮影。

【交通】函館空港から函館市内へはバス約20分。函館ハリストス正教会は、JR函館駅前から函館市電に乗り、十字街下車徒歩約15分。
 日曜午前10時。函館山のふもと、雪景色の港を見下ろす坂道で、大鐘の低い音色が聞こえた。やがて二つの小鐘が高らかにすばやいリズムを刻み、音程の違う三つの中鐘も加わって、小さい方から順に繰り返し打ち鳴らされる。大小六つの鐘による耳慣れない異国の旋律だ。

 「鐘は礼拝の始まる合図。教会に来られない信者に、大事なお祈りの時間ですよ、と伝えるためのもの」

 そう語るのは、両親の代からロシア正教の信徒で、旧制中学生のときからつい数年前まで鐘を打ってきた中居真行さん(80)。当初は亡命ロシア人の信徒もいて、その前で両手と足を使い楽器のように鐘を打ち分けてみせるのが誇らしかった。戦時中、鐘は軍に供出された。戦後新しいものが寄贈され、再び鐘楼に上ったときの感動は忘れないという。

 地元の人たちも、親しみを込めて「ガンガン寺」と呼ぶ。1916(大正5)年の地元紙に、「一種特異の鐘の音」の「函館名物のガンガン寺」とあるから、愛称にも年季が入っている。

 「ここは坂の町。天候や風向きによって鐘の音が違って聞こえる。音にも季節感があるんです」。子供の頃から教会のすぐ下に住み、喫茶店を経営する太田誠一さん(53)は教えてくれた。

 異国情緒たっぷりの響きは迫力満点で、華やかなメロディーが5分間も続く。鳴りやむと、今度は耳を圧する静寂に驚かされる。余韻の続く、めまいにも似た感覚。通行人の雪を踏む音で、やっと我に返るほどだった。

(中村正人)


 ◆函館ハリストス正教会
 日本で最初にロシア正教が伝わったとされる教会。幕末の1860年にロシア領事館の付属聖堂として完成、大火で消失後1916(大正5)年に再建された。鐘楼の鐘=写真=はひもとペダルを操作して音を奏でる。イコン(聖像画)の飾られた聖堂の見学は事前に問い合わせを。国の重要文化財。開館時間は午前10時〜午後5時((土)は4時まで、(日)は1時〜4時)。不定休。見学には献金200円を。問い合わせは0138・23・7387。
 
 ◆異国ロマンあふれる坂道散歩
  函館港を望む一帯は、函館山から港へ向かって20本近い坂が続く。周辺にはエキゾチックな和洋折衷の建造物が多い。散策には函館市電で十字街、末広町下車。
 ▼大三(だいさん)坂 石畳の坂で「日本の道100選」の一つ。函館ハリストス正教会や函館聖ヨハネ教会などの教会群が見どころ。
 ▼八幡坂 函館港を一望できる絶好の眺望ポイント。
 ▼基(もとい)坂 明治時代には行政機関が集中し、坂の上には当時の面影を残す木造洋館の旧函館区公会堂、旧イギリス領事館がある。問い合わせは函館市観光課(0138・21・3323)。
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