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2006.2.22(木)更新  日本音紀行 もうひとつの風景

うだつの町の水琴窟
(岐阜県美濃市)

若い熱気が生んだ「復活」
地中から聞こえてくる水琴窟の不思議な音に耳を澄ます子供たち=旧今井家・美濃史料館で、垣内博撮影

【交通】旧今井家へは、JR岐阜駅から高山線・美濃太田駅で長良川鉄道に乗り換え、美濃市駅で下車。車は、東海北陸道・美濃インターから約5分。
 手水鉢(ちょうずばち)で手を清める。水は小石の間に吸い込まれていく。キーンとビー玉をはじいたような音が勢いよく立ちのぼったかと思うと、そっと鈴を振ったように、コロン、と鳴る。

 遠い昔、どこかで耳にしたような懐かしさ。種明かしは水琴窟(すいきんくつ)――地中に瓶(かめ)を伏せて埋め、水滴の反響を楽しむ日本古来の庭園の仕掛けだ。

 かつて交通の要衝として栄えた美濃。瓦屋根から突き出す「うだつ」と呼ばれる小屋根が、豪商たちの栄華を今に伝える町並みの中、ひときわ立派な構えの「今井家」の庭で人々を和ませるこの水琴窟は、実は埋もれたまま朽ちていく運命だった。

 20年ほど前。空き家になっていた今井家を見て、地元経済界の若手たちが「もったいない」と思った。写真館を営む松田正さん(57)も、千葉から妻の実家の美濃市に移り住んだばかり。「魅力的な町並みの、シンボルにできないか」と考えた。

 仲間と共に東京の家主へ会いに行き、頼み込んで借り受けた。仕事の合間に屋敷の掃除と修繕……。そして、ひび割れた水琴窟を見つけた。「見たことも音を聞いたこともなかったけど、復元してみようやと」

 美濃紙づくりに使う瓶と、長良川で拾った小石を使い、手探りで仕上げた。初めて音を聞いたときのことを「洞窟(どうくつ)に滴る水音みたいな、不思議な印象だった」と振り返る。

 時は流れ、今井家は市の史料館に。庭に響く音は《うだつの町の水琴窟》として観光案内にも載る。最近、松田さんは聞きに行くこともなくなった。「後輩たちが、ちゃんと手入れしてくれるから」。まちづくりの思いも引き継がれたようで、安心ですわ、と笑った。

(横内陽子)


 ◆旧今井家住宅と美濃史料館
 今井家は代々「兵四郎」を襲名し、江戸時代には庄屋も務めた旧家。住居の間取りは市内最大規模で、美濃市の史料館として一般開放されている。美濃和紙の資料なども展示。岐阜県美濃市泉町。午前9時〜午後4時(4〜9月は午後4時半まで)。(火)((祝)(休)の場合は開館)、(祝)(休)の翌日休館((土)(日)の場合は開館)。高校生以上300円。問い合わせは0575・33・0021。
 
 ◆うだつの上がる町並み
 「うだつ(卯建)」とは「うだち」とも言い、民家の屋根の両端を一段高くして設けた小屋根つきの土壁=写真。装飾と、火災の類焼を防ぐ目的を兼ねる。裕福な家しか造ることができなかったため「うだつが上がらない」という慣用句ができたという説も。美濃市には19軒のうだつのある旧家が残っており、国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されている。
 ◆歴史ある町並みで味わう地酒
 江戸時代から続く造り酒屋の小坂家は、現在も11代当主が営業中。店舗兼住居は国の重要文化財に指定されている。土産に銘酒「百春 純米」(720ミリリットル、1230円)も味わえる。同市相生町。午前9時〜午後5時。問い合わせは小坂酒造場(0575・33・0013)。
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