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2006.3.15(木)更新  日本音紀行 もうひとつの風景

 
時の鐘(埼玉県川越市)

江戸情緒ふんわり演出
高さ約16メートル、木造3層のやぐらは今も川越のシンボル。界隈(かいわい)は江戸時代の面影を残す=上田頴人撮影

【交通】川越市へは、JR大宮駅から川越駅まで約20分。西武新宿線・西武新宿駅から本川越駅まで約50分。車は、関越道・川越インターから約15分。
 「蔵のまち」として知られる川越。その中心街で観光客たちが見上げる視線の先に、周囲の家並みからひときわ高くそびえる鐘楼がある。やがて、やさしい鐘の響きが、やわらかな春の風に乗って、のんびり、ふんわり、全部で6回、蔵の街並みを縫うように流れていった。

 「時の鐘」は江戸時代、それまで「寺のもの」だった鐘を、幕府が市中に時刻を告げるため各地に設けたのが始まり。まさに「近世都市の音」で、その音が聞こえる所で暮らすことは、江戸っ子の誇りだった。川越でも同じだったであろう。

 それほど遠くない昔まで、火災の警報としても使われていた。「夜中に半鐘のように鳴らされると、すごみがあって、そりゃ怖かったですね」と話すのは、近くの刃物店の大だんな、宮岡正一郎さん(78)。

 現在の鐘と鐘楼は、明治の大火の直後、蔵造りの街並みに先駆けて再建された。撞(つ)き手がいなくなった戦後は、ずっと音が途絶えていたが、30年ほど前、ちょうど蔵のまちとして川越が注目されるようになったころ、折しも開発された電動の鐘撞きシステムを導入して復活した。朝、昼、そして午後に2度。いつも同じ回数だけ鳴る。

 「あるのが当たり前。自分の家の道具の一つのような」鐘の音のおかげか、近年、宮岡さんは旅に出ると、どうしてもその土地の鐘が聴きたくなる。天下の名鐘もいろいろ聴いた。でも家に帰ると、「このひなびた音色、泥くさい響きがいい」。毎日耳にするならこれが最高、と思うのだった。

 (鳥越けい子)


 ◆蔵造りの街並み

 1720(享保5)年、相次ぐ火災に悩んだ江戸幕府が、それまで身分不相応として庶民に禁止していた「蔵造り(土蔵造り)」を許可。江戸との取引が盛んだった川越の商家もこれに倣い、耐火に優れた蔵造りが普及したとされる。1893(明治26)年の川越大火で町の約3分の1を焼失し、現在30軒ほどが残る街並みはその後に建てられたものが多いという。
 ◆時の鐘の菓子

 1783年創業の「亀屋」(TEL0120・222051)の「小江戸時の鐘」(1個126円)。バターとミルクの生地で川越名物のサツマイモのあんこを包み、時の鐘の焼き印を押した。川越市仲町4(本店)ほかで販売中。

 ◆菓子屋横丁

 明治初期から菓子の仲卸業者が軒を連ねていた。関東大震災で壊滅した東京に代わり、駄菓子を製造・供給するようになったとされ、昭和初期の最盛期には70軒ほどが並んだとも。現在は長さ80メートルに約20軒の店があり、菓子の懐かしい香りが漂う。環境省の「かおり風景100選」にも選ばれている。時の鐘から徒歩約5分。

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