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2006.3.29(木)更新  日本音紀行 もうひとつの風景

 
砂むし温泉
(鹿児島県指宿(いぶすき)市)

熱砂と波音に包まれて
波打ち際での砂むしは大潮の干潮時、好天の日に体験できる。
パラソルで顔を日差しから守り、約10分間砂浴を楽しむ
=指宿市摺ケ浜で(撮影・上田頴人)

【交通】指宿市へは、鹿児島空港からバスで約2時間。電車はJR博多駅から九州新幹線・鹿児島中央駅まで約2時間半、指宿枕崎線に乗り換え指宿駅まで約50分。
 歌人・与謝野晶子の歌にある。

 《しら波の 下に熱沙(ねつしゃ)の隠さるる 不思議に逢(あ)へり 指宿に来て》

 海岸の至るところで熱い湯がわき出す。温められた砂の中に体を埋めて、蒸気で蒸される「砂むし」というサウナのような温泉が、ここ指宿の名物だ。

 でも、晶子はこれを体験できなかったのじゃないか、と思う。

 本来の「砂むし」は、潮が引いたときに浜辺で行う。天候が悪いときはもちろん、満潮時も無理。時を選ぶ楽しみなのだ。《しら波の下に熱沙》と詠んだまさにその時、眼前の浜は水没していたのだから、「砂むし」はかなわなかったはずだ。

 さて、こちらは運よく干潮のタイミングに波打ち際へ行くことができた。湯けむりのなか、ぴちぴち、チロチロと音がする。砂浜にお湯がわき出る音だ。

 砂の上に横たわる。耳元では、砂を掘って体にかけてくれる音。体に感じる重さ。手足の指先にドクドクと血流を感じる。そんな緊張が去ると、遠くから波音が聞こえてくる。ときおり、汗のにじんだ顔のうえをさわやかな風が流れていく。

 これをいつでも味わえるようにと、浜辺に砂を小高く盛って屋根をかけた施設もできた。見た目の閉塞感は否めないが、「砂むし」の間、満潮時の波音が耳元に迫ってくるので、聴覚的にはずっと魅力的だ。

 海が岸を優しくなでるような柔らかな響きが、右から、今度は左からと、体を包む。

 晶子なら、どう詠んだだろう。

 (鳥越けい子)


 ◆砂むし会館「砂楽(さらく)」

 指宿市全額出資の公社が96年に開いた施設。波打ち際の天然砂むし場のほか、全天候型砂むし場も。天候や潮位に影響されるため、波打ち際での入浴には事前確認を。指宿市湯の浜5丁目。午前8時半〜午後9時(平日正午〜1時は清掃)。年中無休(台風など臨時休館もあり)。砂よけタオル持参(販売も)。900円、小学生以下500円(共に貸浴衣代含む)。問い合わせは0993・23・3900。
 ◆山川砂むし温泉保養施設

 大隅半島や屋久島を一望できる景勝地で、穴場感も。指宿市山川福元。午前8時半〜午後5時(7月下旬〜8月は午後6時まで)。(水)休み((祝)(休)の場合は営業)。800円、小学生以下400円(共に貸浴衣代含む)。問い合わせは0993・35・2669。
 ◆「砂むし」の効能

 浴衣を着たまま横たわり、頭以外は熱された砂に埋まる。このため、砂の圧力で心臓から送り出される血液量が増える。
 ▼55℃前後の高温で血管が広がり心機能が高まる、などの作用で、通常の温泉以上の効果があるとされる。うたわれている効能は神経痛やリウマチ、皮膚病など。
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