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2006.5.31(木)更新  日本音紀行 もうひとつの風景

朝市 (石川県輪島市)

出会い招く 呼び込み声
「安いよ。ほら、買ってよ」。元気な声がこだまする=石川県輪島市の朝市で(撮影・渡辺瑞男)

【交通】輪島市へは、JR金沢駅から特急バスで約2時間。能登空港から車かバスで約20分。「朝市通り」は市街地の中心部。
 日本海に突き出した能登半島。その先端に近い輪島の街の目抜き通りは、毎朝250もの露店がずらりと並ぶ。通称「朝市通り」。一歩足を踏み入れると、その場を満たす音の泡に、優しく包まれる。

 「買(こ)うてくだぁ、全部で千円、千円」「魚汁(いしる)、おいしいよ」「ホタルイカどうですか」……。歩くそばから、車窓の景色のように呼び込みの声が変わっていく。

 ここの朝市は千年の歴史をもつ、そう地元では言い伝えられている。戦後しばらくたっても生鮮食料品店が一軒もなかった街で、長く市民の台所を支え、市民の会話が弾む憩いの場にもなってきた。高度成長期の観光ブームを経て、輪島は能登半島の周遊拠点となり、ピーク時には年間250万人が訪れた。朝市も、全国に名を知られるようになる。

 家族で鮮魚を商っている浅野節子さん(67)は、嫁いで以来40年以上、ずっと朝市に立ってきた。観光名所になったことで、今度は旅人との出会いが楽しいという。「カニがおいしかったって、秋田からお米を送ってくれたり、親類みたいなつき合いしとる人もいるわね」

 店に立っているのは、ほとんどが女性だ。威勢の良い声に、こちらも心が浮き立つ。力強い声に囲まれていると、この人のこの腕が、何人の生活を支えているのだろう、思わずそんなことを考えてしまう。

 亭主の一人や二人養えない女は甲斐性(かいしょう)なし−−そんな言い回しがある、ここ輪島。女たちの気骨は、今も変わらず響いてくる。

(鳥越けい子)


 ◆輪島の台所

 「朝市通り」は、港近くの全長約360メートルの通り。午前8時〜正午頃、新鮮な海産物や野菜、花や民芸品などを売る露店が並ぶ。かつての朝市は、地元住民が家計の足しにと、その場で値決めをする簡単な売買をしていた。その名残で、現在でも値札がない品もあり、売り手と買い手の掛け合いは楽しみの一つ。昔から「能登のとと(父さん)楽」と言われるように、働き者の輪島女に出会える市でもある。毎月10日、25日は休み。問い合わせは朝市組合(0768・22・7653、午前中)。
 ▼朝市をのがしてしまったら、通りの西側の「夕市」へ。毎日午後3時から、同休み。問い合わせは輪島市観光課(0768・23・1146)。
 ▼朝市が休みの毎月10日、25日には、通りの東側の「地物市」。午前8時〜正午頃。問い合わせは実行委(0768・22・7777)。
 ◆時を超える輪島塗

 起源は室町時代頃と言われ、木地づくりから模様付けまで約120の工程を専門の職人が分業する。市内の輪島工房長屋(TEL0768・23・0011)では、職人の実演を見学できる。午前9時〜午後6時。4時まで模様付け体験(有料、要予約)も。(水)(10日、25日、(祝)除く)休み。輪島漆器会館(TEL0768・22・2155)の2階資料館では、職人の工具や資料を展示。午前8時半〜午後5時。200円、高校生150円、中学生100円。
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