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2006.6.21(木)更新  日本音紀行 もうひとつの風景

 
岡寺の鐘(奈良県明日香村)

古都を渡る 悠久の音色
鐘にはホクロのような穴がある。子どもたちも響き渡る鐘の音を体験=奈良県明日香村の岡寺で(撮影・塚原紘)

【交通】岡寺へは、近鉄橿原神宮前駅からバスで約15分。車は西名阪道・郡山インターから約40分。
 古代の日本で、政治文化の中心にあった奈良・飛鳥の地。そのほぼ真ん中に、最古の厄よけ霊場として知られる岡寺がある。悠久の時を刻んできたのどかな山里に、鐘の音が鳴り響く。優しく語りかける、慈悲深い仏の声のようだ。

 鐘には、指が一本入るほどの穴が七つ開いている。先の戦争中、鉄砲などの材料に使えるかどうかを調べるため、試験片を採った跡だ。そう聞くと、よけい痛々しく見える。七つ目の穴は貫通していない。鐘の悲鳴に驚いて、最後まで開け切らなかったのか−−。

 当時、全国のどこの寺でもそうだったように、この鐘も供出の運命にあった。難を免れたいきさつを記した文書はないので、その理由は分からない。明日香の風に乗って山里に響く仏の声を奪ってはいけない、そんな願いが通じたのかもしれない。「観音様に申し訳ないと思ったんじゃないでしょうか」。住職の川俣海淳さんは、穏やかな表情で、本尊の観音様のおかげと繰り返す。

 この鐘の音は、音楽でいうドとミのハーモニーに聞こえる。もしドとレだったら嫌な音になるところだ。よその寺の鐘は、一つの音に聞こえることが多い。岡寺に来ると、懐かしい故郷に帰ってきたような気持ちになるのは、この心地よい和音のおかげだろうか。

 それだけでなく、二度と戦争を繰り返さないように、という観音様のメッセージがこもっているのも理由かもしれない。人々の心にいつまでも鳴り響き続けて欲しい、そう願いたくなる音だ。

(安本義正)


 ◆岡寺

 飛鳥を見下ろす山の中腹に位置し、「厄よけ観音」として親しまれる高さ5メートル近い塑像・如意輪観音坐像(重文)が本尊。663年建立とされる。入山料300円、高校生250円、中学生150円。午前8時〜午後5時。TEL0744・54・2007。
 ◆古代の謎を旅する

 蘇我馬子の墓と伝わる石舞台古墳や、亀石と呼ばれる高さ約2メートルの巨大な石など、いつ、どんな目的で造られたか定かでない石造物が村に点在する。「あすか」の語源には諸説あり、現在は村名に「明日香」、駅名には「飛鳥」の文字が当てられている。
 ▼バスで 地元の足となる循環バス「金かめ」と周遊バス「赤かめ」が走る。石舞台や高松塚古墳などを巡るには飛鳥駅と橿原神宮前駅間を運行する「赤かめ」(1日フリー乗車券650円、小学生330円)がおすすめ。
 ▼自転車で 飛鳥駅、橿原神宮前駅前にレンタサイクル店が数軒並ぶ。このあたりは丘陵に囲まれ、田植えを終えた棚田風景が広がる。夏にはアジサイ、秋には彼岸花が楽しめる。1日900円、(土)(日)(祝)は1000円。問い合わせは飛鳥京観光協会(0744・54・2362)。

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