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2006.8.23(水)更新  日本音紀行 もうひとつの風景

鵜飼い (岐阜市)

漁を知らせる櫂の合図
かがり火に照らされた水面で、右に左に魚を追う12羽の鵜を巧みに操る鵜匠=岐阜市の長良川で、(撮影・垣内博撮影)

【交通】鵜飼いを見るには、JR岐阜駅からバスで約15分の鵜飼観覧船事務所へ。
 夜の闇の中、舟のかがり火が近づいてくる。川面を、縄につながれた水鳥たちが泳いでいるのが見える。そこに「ホーウ、ホウ」とやわらかい声。腰みのをつけ麻布を頭に巻いた、漁師たちのかけ声だ。

 岐阜市内を流れる長良川。毎年春から秋まで、水鳥の鵜(う)を使ってアユを捕る「鵜飼い」が行われる。

 鵜匠(うしょう)と呼ばれる鵜を操る漁師が縄をさばくたび、キュッキュッと琴の糸をしごくようなしなやかな音が響く。不意に羽ばたきがして、アユをくわえた鵜が引き上げられた。すると、カーンカーンと竹を割るような鋭い音が川面一面に響き渡る。船頭役の「とも乗り」が、櫂(かい)で舟べりをたたいたのだ。のんびりと泳いでいた鵜が一斉にもぐり始めた。

 とも乗りの野村勉さん(67)は、15歳で修業を始めたベテランだ。「1羽がアユをとってくりゃ、その場所にはもっといる。だから合図してやるんさあ」。音の響きが良くないと鵜はもぐってくれない。「カンの悪いやつはいくらやってもペタペタと情けない音しきゃ出せないね」。野村さんも10年かかった。

 昔はアユもたくさん捕れて、良い漁場に早く着くよう川の中を走って舟を引いていると「ぞうりの下まで入ってきた」。重労働だったが楽しくて、と振り返る。

 やがてアユは激減。今では見せるのが仕事になった。観覧船の前の狭い範囲で漁場を探す。「捕れない日は、音だけでも景気よくカンカンさせる。じゃないとお客さんもこっちも寂しいだろ」。新たな苦労を、さらりと笑ってみせた。

(横内陽子)


 ◆鵜飼い

 魚をのみ込む鵜の習性を利用した漁法で、かつて本州から九州まで100カ所以上で行われていたが、現在は10カ所程度。かがり火の明かりと櫂を船べりに打ち付ける音に驚いて下流に逃げるアユを、船で下りながら捕えていく。捕獲されたアユは傷が少なく、他の天然アユの2、3倍の値が付くともいわれている。長良川の鵜飼いはおよそ1300年の歴史を持ち、明治期に入って観覧船の運航が始まる。鵜匠は宮内庁式部職が与えられ、現在、岐阜市に6人、隣接する関市に3人。世襲制で代々、その手縄さばきが受け継がれている。
 ◆鵜と共に暮らす鵜匠

 鵜飼いには茨城県日立市の伊師浜海岸で捕獲された渡り鳥の海鵜が使われる。川鵜に比べ一回り体が大きく、約800グラム(10〜15匹)の魚をのみ込むことができる。鵜匠は20羽ほどの海鵜と生活をともにし、2〜3年で「一人前の鵜」に育てる。長良橋近くには鵜匠らが暮らす家などがある散策エリア「鵜飼の里」があり、時間によっては鵜匠たちの話を聞いたり、鵜を見たりすることもできる。
 ◆鵜飼観覧船

 毎年5月11日〜10月15日(中秋の名月と増水時などを除く)、長良橋近くの観覧船事務所から鵜飼観覧船が出る。Aコース=午後6時15分、Bコース=6時45分と7時15分出船。3000円〜3300円、4歳〜小学生は2600円〜2900円。要予約。問い合わせは鵜飼観覧船事務所(058・262・0104)。
(2006年8月23日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)
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