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2006.9.6(水)更新  日本音紀行 もうひとつの風景

 
三木の鍛冶(兵庫県三木市)

往時の槌音、受け継いで
真っ赤に焼けた鉄は2人がかりで打つ。息が合って、「トテカン、トテカン」とリズミカルな槌音が響く=兵庫県三木市の金物神社境内で、(撮影・渡辺瑞男)

【交通】金物神社は、新幹線・新神戸駅から地下鉄で湊川公園駅に出て、隣接する湊川駅から神戸電鉄で三木上の丸駅へ。
 獣のうなり声にも似たふいごの音。かまどの火がバチバチとなる。「よぉー」という掛け声を合図に、トッテンカンと金属音が響く。

 金物の産地、兵庫県三木市。街の中心にある「金物神社」の境内で、月1回、古式ゆかしい鍛冶(かじ)屋の音が再現される。職人たちが、技術の保存のために開く儀式だ。

 かまどの前に腰を据えた親方が、中の鉄を取り出す。はがねの台に載せ、掛け声とともに小槌(こづち)で「トン」とたたく。「先手(さきて)」と呼ばれる若い職人が、重さ5、6キロもある大槌を「カン」と打ち据える。

 小さい金物は、親方と先手が一対一でトンカン、トンカンと鍛える。ノコギリなど大きな刃物の時には、先手の人数が2人に増えて三拍子になる。「3人だと息を合わせるのが難しい」。親方の高橋和己さん(74)が言う。60年間この道一筋。手仕事の時代を知る、最後の世代だ。

 戦後ほどなく機械化が進み、「トッテンカン」は機械の「ドンドン」という音に変わった。作業場の多くは郊外の工業団地に移転して、街の槌音はめっきり少なくなった。

 「そら楽になった。機械は『しんどい』言わんし」。和己さんはそう言うが、長男の典三さん(44)は、逆に昔の仕事にひかれる。「手で打つと鉄の声が聞こえてくる」。1本1本、素材の感触を確かめながら作る手応え。昔使われていた「袋ノミ」の復元品も作ってみた。「機械がなくてもできるいうのが職人としての誇りだと思う」。

 典三さんは今、三木でも中堅どころの先手に育った。

(兼古勝史)


 ◆金物のまち

 三木の鍛冶の歴史は、およそ1500年前までさかのぼることができるとされる。時は過ぎて戦国時代、三木城を攻め落とした秀吉が、荒廃した町の復興に力を入れたことから、大工職人や鍛冶屋が各地から集まり、「金物のまち」の基礎ができたと伝えられている。現在もノコギリ、ノミ、カンナ、コテ、小刀の5品をはじめとした大工道具の生産高は、三木を中心とする兵庫県が全国の6割を占める。
 ◆熟練の技を知る

 古式鍛錬の儀式は原則毎月第1(日)、午前10時〜午後1時(7〜9月は午前9時〜正午)。製造業者が毎月交代で行い、10月はカンナを予定。神社横の金物資料館(午前10時〜午後5時、(月)休み)入り口には唱歌として親しまれた「村のかじや」が流れる記念碑も。

 ◆三木金物まつり

 地元の金物製品が一堂に展示・販売される一大イベントで、三木市役所前広場をメーン会場に、今年は11月4日(土)、5日(日)に開催。通常より安値で販売する「金物びっくり市」や、ノコギリを使って切る速さを競う「丸太切り競争」など。午前9時〜午後5時(5日は4時まで)。問い合わせは実行委(0794・82・2000)。


(2006年9月6日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)
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