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2006.9.27(水)更新  日本音紀行 もうひとつの風景

地獄谷 (北海道登別市)

煮えたぎる 地下の脈動
ライトアップされた地獄谷。静かな夜は地底からわき出る熱湯と噴気の音がよく聞こえる。右奥が登別温泉街(撮影・上田頴人)

【交通】登別温泉へは、新千歳空港から高速バスで約60分。またはJR新千歳空港駅から特急電車約50分で登別駅、バスで約15分。
 硫黄のにおい。熱気が肌をなでる。闇の中で、小さな光が奥に向かって点々と連なっている。夜を選んで谷底への道を歩く。すごみのある音が聞こえてきた。

 鈍くとどろく山鳴りと、地の底からしみだすような煮えたぎる音。小さな温泉が地面の裂け目からいくつもわき出し、その場で沸騰している。静かな水面が泡立ち始め、見る見る熱湯がたぎる様は、まさに「地獄」の名にふさわしい。

 登別の地獄谷は、約1万年前の噴火でできた。江戸期の紀行文に「湯元の音は百千の雷の如く」とある。往時の音の記憶は、「大砲地獄」「鉄砲地獄」といった大小の泉源の名にも刻まれている。

 「昔に比べればおとなしくなった」と語るのは温泉街で生まれ育った玉川英三郎さん(84)。土産店を営んできたが、引退し、付近を散歩するのが日課だ。「子どもの頃はしょっちゅうここで遊んだ」。ガキ大将たちと崖(がけ)をよじ登り、一番奥に咲く花の実を採りに行く。ゴーゴーボコボコと鳴り響く音は子ども心を圧倒した、と振り返る。

 近年、地獄谷の活動はやや沈静化しているようだ。だが、間欠泉が突然出現しては収まり、何年かたつと別のところで噴気が起こる。「奥の日和山に行ってごらんなさい」。玉川さんに教えられ、地獄谷から足を延ばしてみた。

 山頂付近の岩の裂け目から高圧の蒸気が一気に噴き出し、ジェット機のような音が周囲にとどろく。沼は沸騰している。地下の脈動を、肌で感じた。

(兼古勝史)=おわり


 ◆地獄谷

 登別温泉街から徒歩5分ほど、同温泉最大の泉源地。谷周囲の遊歩道(1周約10分)や展望台から、地獄と呼ばれる湯のわき出し口や噴気孔が見られる。今夏始まった夜間特別公開は、遊歩道(一部区間)にフットライトを設けた「鬼火の路」を歩く。11月30日(木)までの午後7時半〜10時。
 ◆登別温泉

 道内屈指の温泉郷。1日1万トンの湯量を誇り、硫黄泉や食塩泉、鉄泉など泉質が多彩なことから、「温泉のデパート」との別称もある。始まりは江戸期とされるこの温泉街、メーンの「極楽通り」には、飲食店や土産店などが軒を連ね、そぞろ歩きも楽しめる。地獄にちなんで、ユニークな鬼のモニュメントも出迎えてくれる。
 ◆地獄谷から奥へ

 遊歩道を進むと、煮えたぎる湯釜のように見える「奥の湯」がある。ひょうたん型の「大湯沼」から温泉の湯が流れ出す「大湯沼川」は、足湯スポットになっている。約10日間の周期で湯の量が変わる「大正地獄」は、不気味な地鳴り音が聞こえ、青やピンクなど湯の色が変化して見えるという。白煙をあげる活火山「日和山」は、地獄谷から遊歩道を抜け、車道脇を歩いて25分ほどの展望台から。
(2006年9月27日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)
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