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2010.3.8(月)更新  ぶらり、鉄道散歩 〜山あり谷あり、鉄道あり〜
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ぶらり、鉄道散歩
 
第19回 阿蘇外輪山の裾野を走るトロッコ列車

南阿蘇鉄道高森線(立野−高森)

 南阿蘇鉄道高森(みなみあそてつどうたかもり)線は豊肥(ほうひ)本線の立野(たての)駅から阿蘇郡高森町の高森駅に至る17.7キロメートルの第三セクターの鉄道。全線非電化の単線で、外輪山(がいりんざん)の裾野をのんびり走る。観光客向けのトロッコ列車「ゆうすげ号」が人気を集めている。
文=芦原伸(紀行作家) 写真=井上廣和(写真家)

阿蘇外輪山の裾野を走る懐かしのレールバス(長陽−加勢)
 
 1両だけのレトロ列車に乗る


高森の車両基地に待機するトロッコ列車「ゆうすげ号」。全席指定で、乗車にはトロッコ券(乗車券込み大人970円)が必要
 阿蘇外輪山の麓にある立野駅はJR九州・豊肥本線との連絡駅。スイッチバックで有名な駅だ。立野駅に降りると古風な列車が待っている。南阿蘇鉄道の1両だけのクラシックカーだ。車体はモスグリーン、天井に黄色の帯がある。車内は向かい合わせのボックス席が主体で、紫色のシート、床は板目、照明は花形。いきなり昭和時代へ舞い戻った感じだ。

 平日の乗客は地元の女子校生、老夫婦などが多く、観光列車という趣はない。この南阿蘇鉄道はずいぶん前に乗ったことがあった。昭和50年代で、まだ国鉄の高森線だった頃、急勾配を小さな蒸気機関車C12形が懸命に駆け登っていた姿を思い出す。

 立野橋梁を渡り、南郷谷へ

 出発するとすぐに2つの高い鉄橋を渡る。立野橋梁は全長139メートルで、山陰本線の餘部(あまるべ)鉄橋と同様のトレッスル橋が美しい。次の第一白川橋梁は全長166メートル、高さ62メートルの鋼鉄アーチ橋。完成当時は日本一の高さを誇っていた。観光シーズンに運行されるトロッコ列車は橋にかかると徐行運転をして、乗客は眼前に広がる原生林や渓谷を満喫するという。

 長陽(ちょうよう)駅を出るとさわやかな高原鉄道といった趣になった。阿蘇五岳と外輪山に挟まれた南郷谷(なんごうだに)は、北側の阿蘇谷に比べて幅が狭く、谷に起伏があるのが特徴だ。
 沿線には寺坂(てらさか)水源や白川(しらかわ)水源など数多くの湧水池があり、自然の豊かさと美しい環境が守られていることが注目されている。


第一白川橋梁を渡るMT−2000形気動車(立野−長陽)

 

長陽駅では週末に限り、駅舎内のカフェが営業
Train Colmn 木造駅舎の名物カフェ
 1928(昭和3)年開業の長陽駅。高森線で唯一現存する木造駅舎のなかに、「久永屋(ひさながや)」という小さなカフェがある。駅は1971(昭和46)年に無人駅となったが、駅事務所の跡地をカフェに改装。カフェの店主が駅長を務めている。土・日・祝日のみの営業だが、レトロ感と阿蘇のフルーツを使ったシフォンケーキが人気を集めている。
 
 観光名所に生まれ変わった悲しみのトンネル


かつて高森線で活躍していた小型機関車C12形。高森駅に静態保存されている 写真協力=天夢人
 路線の歴史を紐解けば、昭和のはじめに遡る。1928(昭和3)年、豊肥本線の前身の宮地(みやじ)線の支線として開業。同年に豊肥本線の全通により立野−高森間を高森線として分離した。

 当初は高森から高千穂(たかちほ)を経て延岡(のべおか)まで、九州の屋根・阿蘇を横断する雄大な路線が計画されていた。しかし、宮崎県側の高千穂−延岡間は高千穂線(2008年廃止)として開業したが、高森−高千穂間の建設は、トンネル掘削中の異常出水事故により中断されてしまう。

 1984(昭和59)年、第三セクター鉄道への転換が決定し、1986(昭和61)年に南阿蘇村・高森町など沿線自治体が出資する南阿蘇鉄道が誕生した。

 終着の高森には、高森トンネル湧水公園(*地図のイラスト)がある。これは前述のトンネルの跡地が湧水池として整備されたもので、毎年7月には「七夕まつり」、11月中旬〜12月には「クリスマスファンタジー」が催され、トンネル内が壮麗なイルミネーションで彩られる。

 
ログハウス調の駅舎が映える南阿蘇水の生まれる里白水高原駅
 日本一なが〜い名前の駅を経て、高森へ

 阿蘇外輪山の雄大な風景を見ながら列車は勾配を登る。南阿蘇水の生まれる里白水高原(みなみあそみずのうまれるさとはくすいこうげん)駅は、1992(平成4)年4月1日の開設当初、字数にして14字、 平仮名に直すと22字で共に日本一長い駅名として話題になった。現在では読み仮名では、茨城県の鹿島臨海鉄道の長者ヶ浜潮騒はまなす公園前(ちょうじゃがはましおさいはまなすこうえんまえ)駅と並んで22文字の日本一だが、字数では東京ディズニーランド・ステーション駅とリゾートゲートウェイ・ステーション駅に次いで14文字で全国3位である。

 この駅の隣にも、阿蘇下田城ふれあい温泉(あそしもだじょうふれあいおんせん)駅という長い名前の駅がある。ここは下田城をイメージした城郭風の駅舎で、駅舎内に温泉が併設されている。

 阿蘇白川駅を過ぎると25パーミル(1000メートル進んで25メートルの高低差)の上り勾配が続く。見晴台(みはらしだい)駅を経て、車窓に阿蘇五岳の最東端にある根子岳(ねこだけ)が映し出されると、間もなく終点の高森駅に到着する。

 
MAP
イラスト/石原ケンジ
交通アクセス
≪南阿蘇鉄道高森線・立野駅への鉄道アクセス≫
熊本空港から
熊本空港→立野(高速バス570円)
計570円

  
著者プロフィール
芦原 伸
著者/芦原 伸
(あしはら・しん)
1946年生まれ。北大文学部卒。鉄道ジャーナル編集部勤務の後、フリーランスに。現在は(株)天夢人TEMJIN代表。日本旅行作家協会常任理事。日本ペンクラブ会員。著書には『旅はひとり旅』(朝日新聞ブックレット)、『鉄道ひとり旅』(講談社)、『ロシア一九九一、夏』(角川学芸出版)、『鉄道おくのほそ道紀行 週末芭蕉旅』(講談社)、『60歳からの青春18きっぷ』(新潮社)ほか多数。
井上廣和
写真/井上廣和
(いのうえ・ひろかず)
1951年横浜生まれ。中学生から蒸気機関車を撮り始め、広田尚敬の助手を経て独立。鉄道写真では「四季をめぐる」をテーマに、色彩に包まれた車両たちを狙っている。日本写真家協会会員。『日本の私鉄シリーズ』(保育社)、『ぼくは5000がたでんしゃ』(小峰書店)、『ヤマケイレイルブックス』(山と渓谷社)、『JR全車両大図鑑』(世界文化社)ほか。
 
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