駅前に徳島城址を仰ぎ見る徳島駅は、徳島県の県庁所在地駅であるばかりでなく、高松からの高徳(こうとく)線、海峡を望む鳴門からの鳴門(なると)線(池谷<いけのたに>で高徳線から分岐する路線だが、列車は徳島−鳴門間を通して運行)、内陸の交通の要衝である阿波池田とを結ぶ徳島線(正式には佐古<さこ>―佃<つくだ>間)、そして、行き止まり路線である牟岐線の4路線が結節する四国東岸の鉄道の要衝でもある。阿波踊り(*地図のイラスト)が開催される8月中旬には、全国から人が押し寄せる。
ホームに待機中の特急「むろと3号」は、発車のアナウンスとともに、エンジン音を高めて走り出す。徳島市内は駅間が短く、阿波富田(あわとみだ)、二軒屋(にけんや)、文化の森のそれぞれの駅が次々と車窓を流れてゆく。
周辺は市街地だが、文化の森を過ぎて園瀬川(そのせがわ)を渡ると、徳島平野の田園地帯が広がる。ふた駅先の中田からは再び小松島(こまつしま)の市街地に分け入って、市の玄関駅である南小松島で初めての停車。ここまで所要時間10分ほどだ。
南小松島を出ると、左は市街地、右は水田の対照的な景色を眺めつつ進み、一時、住宅地も途切れるが、羽ノ浦(はのうら)で再び市街地となり二度目の停車。すぐに発車して、那賀川(なかがわ)、桑野川(くわのがわ)を連続して渡ると、四国最東端の自治体で沿線の中核都市・阿南(あなん)に到着する。ここでは、降車客が乗車客を上回り、車内はいっそう空席が目立つようになる。
「むろと3号」は、キハ185系の3両編成で運行されている。このキハ185系は、JR化後の経営基盤の弱さが指摘されていた四国、九州地区の輸送改善に国鉄最末期に開発された特急形気動車で、登場から20年余りを経ているが、客室設備などは改修されているため古さを感じさせない。また、徳島−阿南間は直線区間を中心に最高時速110キロで運転され、所要時間わずか25分と短い。