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伝統の技守り継ぐ7人   くらしの良品探訪タイトル
イラスト
【イラストより】自家栽培したホウキモロコシの穂を編んで箒(ほうき)を作る。
第9回
箒
群馬県川場村


地図
 武尊山(2158メートル)の南麓(なんろく)に抱かれた川場村は、明るい日差しの中にのどかな農村風景が広がっている。かつては養蚕が盛んで、桑畑が多かった。耕地はリンゴやブドウ、ブルーベリーなどの果樹園に代わり、季節ごとに実をたわわにつける。道端には無数の野仏が果樹の葉の下にひっそりとたたずんで、ヒソヒソ、ブツブツと旅行く人に語りかける。

 そんな果樹や高原野菜に交じって、秋にひときわ高く穂を伸ばしているのはホウキモロコシで、これが箒(ほうき)の材料になる。実は食用には向かないが、以前は家畜の餌の「増やし」にしたり、戦時中はアク抜きをして飢えをしのいだりしたこともあった。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 川場村は昔から箒作りが盛んで、特に生品(なましな)地区で作られる「生品箒」は、関東一円に名を知られていた。いまは箒の材料のほとんどが海外からの輸入品で、出来合いの安価な箒も入ってきているが、生品ではいまも自分の畑でホウキモロコシを栽培して、昔ながらのいい箒を作り続けている。

 「春に種からまいて丹精して育てるから、いい材料を吟味して自分で納得がいく箒が作れるずら。輸入ものは手抜きが多くて、あんまりいいものはねぇやな」

 関直太さん(75)がいう。関さんは、もう50年以上も箒を作り続けている。生品では、以前は箒を作らない家はほとんどなかったが、いまは7人の有志がその技を守り継いでいる。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 刈り取ったホウキモロコシは、脱穀してから約1週間天日干しで乾燥させ、いい穂をよって束ねる。作業台にクイのように立ったホウキグイから伸びる仮ヒモできつく締めてから糸を巻く。穂首を折るように締め、ホウキモロコシの太い茎を短く切ったウワガラを3本ずつ足しながら編み上げていく。ウワガラは、形と強度以外に、穂と穂の間に空間を作ることで掃いたときにちりをしっかりとらえ、穂先の「かえし」をよくする。

 座敷箒には、一般に袋箒と閉じ箒がある。袋箒は、胴の部分を市松編みにして仕上げる。俗に「野郎箒」と呼ばれるのは袋箒の仲間だ。閉じ箒は、編まずに糸で縫って仕上げる。袋箒の方がゆるやかで弾力があり、閉じ箒は腰が強い。ゆかたと着物のような違い。それぞれに向いた使い方がある。

 いい箒は、シャッ、シャッとやさしく床を撫(な)でてちりを掃く。埃(ほこり)が立たず、畳につやを出す。日々の暮らしを慈しむゆとりが生まれる。


リンゴの木の下に並ぶ石仏 川場村から武尊山をのぞむ
リンゴの木の下に並ぶ石仏 川場村から武尊山をのぞむ

◆お取り寄せ
 半柄袋箒(2700円)、半柄三段巻き(2200円)。送料・代引き手数料別。問い合わせは利根沼田座敷ほうき組合(TEL0278・52・2771)。

(2003年10月15日朝日新聞東京本社夕刊のマリオン紙面から)

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