
【イラストより】厳冬の冬に山から切り出してきたトチの木の原木を荒どりし、鉈(なた)で鉢を彫っていく。
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第20回 こね鉢
 長野県栄村 |
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名だたる豪雪地帯の秋山郷は本格的な雪に埋まろうとしていた。秋山郷は、信越国境にそびえる苗場山(2145メートル)と鳥甲(とりかぶと)山(2038メートル)にはさまれた、中津川の深い峡谷に沿って点在する12の集落の総称だ。
屋敷、上ノ原の集落を過ぎると、道はつづら折りの急坂になって下り、11軒の民家が寄りそう和山の集落に入る。川を挟んで鳥甲山が立ちはだかっている。
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こね鉢職人、山田和幸さん(53)の家は集落の中ほどにある。こね鉢はそばやうどんの粉を練る木鉢。かつては半年近く雪に閉ざされた秋山郷の、男の冬仕事として作られてきたが、職人は山田さんを含めて数人に減ってしまった。
「こね鉢も、熊撃ちも、イワナ釣りも、おやじのあとを引き継いだようなもんだけど、これもみんな秋山郷に住む男の宿命かもしれないね」
山田さんが静かに語る。横顔が仏壇で笑う父親の遺影に似てきている。
作業は、厳寒の冬にトチの木の伐採から始まり、搬出まですべて自分でやる。樹齢100年から150年のトチの古木は、年輪がミリ単位につんでいるうえに、生でカンカンに凍っていて、雪の上を運び出すのは重労働だ。
「寒いときに切り出した木は色が白くて肌が滑らかで、きれいにできる」
輪切りにした原木をおので「荒どり」し、チョウナで鉢の形に整えていく。トチはケヤキ以上に狂いやすい。古木は組織が複雑で、ねじれ込んでいることもあるので木取りが難しい。若い時の傷が出てくることもあって、彫ってみないと分からない。
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トチは乾燥すると硬くて刃物が立たないので、作業にかかる数日前から水の中につけておく。水から上げて作業場に運び、八中釿(はっちゅうな)と呼ぶ道具で内側を掻(か)くように削っていく。カッ、カッと刃があたる音が作業場に響く。仕上げの前ガンナの彫り跡はそのまま残す。滑らず粉をこねやすい。
山田さんの鉢は、父親ゆずりに、縁の内側にカエシをつけてある。粉が外に飛び出さず、こねていると中に戻ってくる。
トチの鉢は木肌が美しい。「ちぢみもく」といって、複雑な組織がむらむらとしたつややかな木目を描き出す。トチの野生の生命が躍動している。
最近はそば打ちがブームで、本物志向のトチのこね鉢が注目されている。ちらしご飯やサラダボウル、ワインクーラーなどに利用価値が広がっている。
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| 険しい山容の鳥甲山 |
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◆お取り寄せ
こね鉢尺3(直径39.5センチ)は1万7000円、尺4(42.4センチ)2万2000円、尺5(45.5センチ)2万8000円。その他大きさは注文に応じる。送料別。
注文は郵送かファクスで。TEL・FAX山田さん(0257・67・2250)。
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