
【イラストより】熊笹をすきこんだ和紙をこより状の細い糸にして布を織る。強い「ささ和紙布」になる。
|
第26回 ささ和紙布
 愛媛県東予市 |
|
四国、今治あたりから眺める瀬戸内の海は、春がすみに煙って、無数の島々が湯にでもつかるように点在している。燧(ひうち)灘の海岸線を東予市に向かうと、雪化粧をした霊峰、石鎚山(1982メートル)が迫ってくる。吹き下ろす冷たい風が、チラチラと綿のような雪を運んでくる。
凍えて駆け込んだ織物工場の中にも、雪のような綿くずが積もっていた。機織り機が何台も並び、カシャカシャと規則正しいリズムを刻んでいる。数千本の経(たて)糸が明かりを透かして小刻みに上下するたびに、緯(よこ)糸を巻いたシャトルがものすごい速度で左右にはじき返されていく。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「子供のころ、とんできたシャトルが胸を直撃して死ぬ思いをしたんよ」
渡辺パイルの渡邊利雄さん(45)が伊予独特の柔らかい口調でいう。渡辺パイルは今、繊維会社のイトイテキスタイルが開発した「ささ和紙布」という新しい素材に情熱を注いでいる。ささ和紙布は、熊笹(くまざさ)をフレークにして和紙にすき込んで細長く切り、こより状に撚(よ)りをかけて糸に加工したものを布に織る。
熊笹は、昔から魚を包んだり、笹団子やチマキに使ったりしたように優れた抗菌、防臭作用がある。また和紙は、セルロース99・9%の自然素材。水分を吸って放出する調湿作用があり、脱臭性にも優れている。もともと水に強い和紙を、さらに耐水性を高めるように工夫し、布に織ることで丈夫になり、繰り返し洗濯できるようになった。
「綿や麻の布は、細かい毛羽がたくさん出ていてそれが肌を刺激するんやわ。ささ和紙布は毛羽がほとんどなく、ほこりも発生しない。肌の弱い人、アトピーの人にもいい」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ささ和紙布は、水にぬれてもべとつきがない。断熱性があるので夏は涼しく、冬は暖かい快適素材。紫外線を80〜90%もカットする。熊笹と和紙という天然素材同士の出合いと融合で画期的な布ができた。いろんな可能性を秘めている。
「ささ和紙布の良さと、自分らの織りの技術で、世の中の役に立つことをしたいんやわ。とりあえず、シーツと枕カバーから始めようと思っている」
シーツや枕カバーは、肌触りがよく、汗をかいてもサラッとして気持ちがいい。赤ちゃんや病気がちな人にもいい。シーツはワッフル状に織りを工夫してあるので、接地面が少なく床ずれしにくい。
人間、人生の半分は布団の中で過ごす。健康で快適な安眠こそ、何ものにも代え難い宝物である。
 |
| 本州と四国を結ぶしまなみ海道 |
|
◆お取り寄せ
ささ和紙布のシーツはシングル1万5000円、セミダブル1万6000円、ダブル1万8000円、ピローケース4000円。税・送料別。
問い合わせはタオルの自然工房(TEL・FAX0898・48・8955)。
|
|
|