
【イラストより】洋服ブラシは豚の毛をひと穴ひと穴、手作業で植えつけていく。
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第28回 手植えブラシ
 東京都墨田区 |
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東京は両国の、清澄通りかいわいは下町の風情が色濃く残っている。しもた屋風の家や昔ながらの商店が軒を連ね、気取らない庶民の体温が漂っている。
通りを歩いていると、「刷毛(はけ)ブラシ製作 田中ブラシ製作所」の看板が目に入る。店の前には柄の長いブラシやモップ、たわしなどが無造作につるされている。ガラス戸越しの作業場で2人が仕事をしている。板の間にデンと座り、手先だけが踊るように動いている。年季の入った手仕事は見ていて気持ちがいい。田中久継(ひさつぐ)さん(66)と静江さん(61)。
「私は職人だから、昔からずっと同じことをやっているだけでね。ただ、見ての通り仕事場が看板、自分が看板だから手抜きだけはできない」
機械化して事業を拡大する、高度成長の時代にも背を向けてきた。
「職人はどうせ己一代、腕一本。消えてなくなるなら消えてみやぁがれ!」
江戸っ子の洒脱(しゃだつ)さの中に、叩き上げの職人の意地と気骨がにじみ出ている。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
天然毛のブラシは一度使ってみると、そのよさが分かる。天然毛のブラシにこだわりを持つ愛用者も多い。
「私んとこで手作りしているブラシは、200から300種類はあるかな。使う人の細かい注文で作るものも入れればもっとになる」
洋服、ヘア、ボディー、フェース、犬や猫用のブラシもあり、形や大きさもいろいろある。
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洋服ブラシは豚の毛を使う。豚の毛は猪(いのしし)と同じで毛に根っこがあって腰が強い。すき間ができてホコリがきれいに取れる。ブラッシングの効果があり、静電気を起こさない。生地を傷めず、洋服のもちをよくする。
ボディーブラシは馬のしっぽ。油があって水に強い。使っていると毛の先が丸く減っていき、皮膚への刺激がやさしく、血行をよくする。しかも、油分を補給するために肌が美しくなる。
ペットブラシも豚の毛を使う。ものによってモンゴルの馬毛やイタチの毛、バラの木の繊維を使う商品もある。田中さんは、天然毛の手植えにこだわっている。
ホオの木の柄のひと穴ひと穴に、束ねた毛を細いステンレスの針金で植えつけていく。毛が少なすぎるとゆるくなるし、多すぎると穴に入らない。穴の大きさ、毛の太さを微妙な手加減で調整する。
手植えのブラシは機械植えの3〜5倍モチがいい。大事に一生使い込むブラシ。使うほど肌になじむ生活道具だ。
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