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郷愁と涼風でぐっすり    くらしの良品探訪タイトル
イラスト
【イラストより】純麻の蚊帳。通気性、吸湿性が良く、蚊帳の中の温度を下げてくれるので涼しい。
第40回
蚊帳
蚊帳
静岡県磐田市


地図
 日本有数のトンボの楽園、桶ケ谷(おけがや)沼は一面アシに覆われていた。沼を1周する木道を、足音を立てないように歩くと、かすかな水のささやきが聞こえてくる。保護運動で守られた沼とその周辺約50ヘクタールには、67種のトンボと、156種の野鳥、650種の植物が生命を謳歌(おうか)している。かつては、こんな風景がどこにでもあった。

 心洗われた気分で磐田の町へ。ここにも懐かしいものが待っている。磐田駅前の小さな寝具店「菊屋」。ご主人の三島治さん(48)が昔懐かしい蚊帳の復権に情熱を注いでいる。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 「蚊帳は網戸やクーラーの普及で廃れてしまった。でも、逆にそれで蚊帳の良さが見直されることになった」

 10年前までは年に数張売れる程度だったが、7年前からインターネットで通販を始めたら、注文が殺到して昨年は千件を超えた。

 長いこと「蚊帳の外」だった蚊帳が、いま脚光を浴びているのは、都市化された社会の、部屋の密閉性とクーラーによる冷房病、アトピーなどの皮膚疾患、いわゆる現代病が、快適な睡眠を妨げているのが理由の一つ。体調不良や不眠症に悩む人が意外に多い。

 そうなると、昔、蚊帳をつった夏の夜の心地よさがよみがえってくる。部屋に蚊帳を張って、障子や窓を開け放した夜風が涼しかった。蚊帳を通して見る外の風景が、ガラス片で細かく引っかいたようにぼやけていた。夜陰で鈴虫や松虫が鳴いていた。蚊帳の中は特別な安らぎがあって、ぐっすり眠れた。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 三島さんは、現代生活に合った蚊帳を工夫して作っている。昔の蚊帳は、縦糸と横糸をでんぷんのりで固めて平織りにしただけなので洗えなかったが、縦糸と横糸をカラミ織りにしてあるので、気軽に洗えるようになった。

 素材は純麻。上品な質感で、通気性に富み、細菌の発生を防いで衛生的。また、吸湿性が良く、蚊帳の中の湿度を下げて涼しい。暑苦しくて、エアコンや扇風機をつけたいときでも、天然素材の麻が風を和らげる。カミナリ様も防いでくれるといわれる。和室用、ベッド用、ワンタッチ蚊帳、六面体のムカデよけの蚊帳などもある。おしゃれなインテリアにもなる。

 高温多湿な日本の夏を快適に過ごし、心地よい眠りを味わいたかったら蚊帳に限る。一度使ったら、その良さをしみじみ実感できる。  


桶ケ谷沼
多くの動植物がすむ桶ケ谷沼

◆お取り寄せ
 蚊帳(麻100%、カラミ織り)はシングルベッド用が4万2000円、ダブルが5万7750円。和室用は3万1500円(3畳)〜5万7750円(8畳)。送料別。

(2004年6月9日朝日新聞東京本社夕刊のマリオン紙面から)

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