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差し向かいで友と一献    くらしの良品探訪タイトル
イラスト
【イラストより】炉で溶けたガラスのタネを吹きさおで吹いて形にする。
第41回
創作ガラス酒器
創作ガラス酒器
千葉県千倉町


地図
 千倉町は南北に13キロ。太平洋に沿って、エメラルドグリーンから紺碧(こんぺき)に色を深める海と、屏風岩の奇岩群や船だまり、白い砂浜が続いている。暖冬涼夏。鯨もやってくる。冬でも、露地植えのお花畑に彩られる。

 ウキウキした気分で山手に足をのばす。そこに友人のガラス工房がある。大場匠(たくみ)さん(38)。数々のコンクールで受賞している有能な若手ガラス作家で、3年前から千倉で制作活動をしている。

 その彼に数カ月前から、「何か面白い、冷酒用の酒器ができないか」という相談を持ちかけていて、それが「できた」という連絡があった。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 大場さんが、ニコニコした顔で待っていた。酒器は、酒が2合弱入る大きさで、口の真ん中をギュッと絞った、いわゆる両口型。お猪口(ちょこ)が2個セットになっている。細かい砂粒のようなものと気泡が入っていかにも涼やかで、独特のゆがみを生かした柔らかいフォルムが、遊び心があって楽しい。

 「これ、ボンペイって名前をつけようと思っている。ほら、早野凡平っていう、天才芸人がいたでしょう。帽子芸の。あの帽子のイメージで作った」

 彼一流のシャレで、作家然としない、一種のテレ隠しでもある。

 「酒は、気の合った相手としみじみ飲(や)りたいじゃないですか。両口だと、間に置いてつぎ合える」

 確かに、大きさも手頃で、手のひらに納まって持ちやすい。気泡入りで、清涼感がある。夏の冷酒にぴったりだ。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 溶解炉にゴーゴー音を立てて火が燃えている。温度は約1300度。中でガラスのカレットがドロドロに溶けている。そのタネを、吹きさおを差し込んで取り、丸く形を整えて珪砂(けいしゃ)をつける。一息フッと吹き入れるとゆっくり膨らんでくる。外側から先のとがった道具でブスブス突く。それが気泡になる。

 再び炉の中からタネを取り、二層目で包み込む。アメのように柔らかいガラスの塊に、文字通り息が吹き込まれ、形が出来上がっていく。鉄輪で形を矯正し、口の部分はハサミで切ってから洋ばしで広げたり、曲げたりして形を作る。

 ガラスは、火と融合して形を変える。大場さんは、無理やり形にしようとしない。作意と、偶然性との出会いを楽しんでいる。一個一個形が違い、個性がある。手作りならではの面白さでもある。

 今年の夏は、一風呂浴びて汗を流してから、冷酒で1杯飲る楽しみができた。  


千倉の海
年中温暖な千倉町

◆お取り寄せ
 ガラス製の酒器とお猪口2個のセットは1万2000円。送料別。手作りのため、発送に時間がかかる場合があります。

(2004年6月16日朝日新聞東京本社夕刊のマリオン紙面から)

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