職業柄でしょうか。絵画でも陶器でも、動物がモチーフとなっているものに目が留まります。日本各地、47都道府県のネコとの出会いも楽しみですが、最近は日本の景色のなかで、野生動物を江戸時代の動物画のように撮りたいとの思いがあります。ニホンジカ、ニホンザル、そしてタンチョウ、オジロワシなど被写体はたくさんあります。
江戸時代の画家、伊藤若冲(じゃくちゅう)(1716〜1800)のニワトリは、色使いからハッとさせられます。羽の1枚まで丁寧に描かれていて、若冲がニワトリのどこにひかれたかがすぐに分かるのも興味深いです。
ただ、ニワトリなら間近に観察が出来ますが、野鳥となると双眼鏡がない時代での観察はたいへんだったでしょう。野鳥が樹間で鮮やかな宙返りをする様子には、一瞬の輝きが見られます。それを絵にすること、また写真にすることには、写すヒトの技量が極限で試されるような気がします。
アメリカでは鳥類学者、ジョン・ジェームズ・オーデュボン(1785〜1851)の鳥の絵が知られています。フロリダの湿地に茂る植物を背景にしたカッショクペリカンからは、生息環境を重要視したオーデュボンの姿勢が伝わってきます。
野生動物は、生きていく山や川があるから生きていけるのです。顧みて日本には、山に生きる野生動物たちが有害鳥獣とされている現状があります。ヒトにとって害となれば仕方ないのかもしれません。でも、野生動物を生かしておくと得になるような方法だってあるはずです。
クジラが良い例でしょう。クジラは世界中でホエールウオッチングが行われています。日本列島で野生動物が当たり前に生きていけるようにして、それを世界中の観光客に来て見てもらうのも、考えられるひとつの方法です。それこそ環境立国というのでしょう。 (動物写真家)
◇8月は歌舞伎俳優の市川亀治郎さんによる執筆です。