
01年に開催された大型の国際展「横浜トリエンナーレ2001」で、私が担当した作品の中に、オノ・ヨーコの「貨物車」=
写真©Yoko Ono 撮影:黒川未来夫=がある。
この作品は、まず、最初にベルリンの国会議事堂前の広場に展示され、物議をかもした。作品はドイツの鉄道の本物の貨車が弾丸で穴だらけになったものだ。そして、その穴を通して内部から光が漏れている。天井の穴からは、強烈なサーチライトの光が空に向かってひとすじに伸びている。この作品に感動した私は、これを横浜トリエンナーレにもってくることに尽力した。
ちょうど横浜赤レンガ倉庫が改修され、その前の広場には、古い線路がそのまま残されることになったので、そこにこの作品を設置した。
この作品は見ただけで、なにか大変な悲劇がおこったことを連想させる。たぶん貨車の中にいた人々の大量虐殺が行われたのだろう、という憶測。そして、空に打ち上げられている一条の光は、その魂の浄化にちがいない。
日本での展示に関して、オノ・ヨーコは新たにこの作品の音楽を制作した。うめき声のような音声の流れが最後に鳥のさえずりに変わり、明るく希望に向かって解放されていく。
オノ・ヨーコに物語の背景を聞いた。彼女は、この作品は置かれた場所によって、意味が変わるという。ドイツではナチスによるユダヤ人の悲劇、メキシコで展示したときにはメキシコの国境で起こった悲劇、という風に、それぞれの観客が自国の歴史的な事実に結びつけて解釈する。そして、「日本だったら、みんな何を思うのでしょう」と彼女は言った。
アートは、楽しい物もあるがこんな風に、歴史や事実を象徴的に語り、人の心を打つものもある。楽しげな作品の多かったトリエンナーレ展の中では、異例に重く、深く、厳粛な作品であった。