
光と空間で作品を作るアメリカのアーティスト、ジェームズ・タレルのもっとも知られている作品は、天井が方形に開き、空が見える作品だ=
写真©James Turrell。私が、それを最初に見たのは81年、イタリア・ミラノ近郊のバレーゼにあるパンザ伯爵の屋敷の中だった。コレクターだった伯爵は、45年から65年にかけて、こうしたコンセプチュアル、ミニマルと呼ばれる作品を約660点収集した。彼はアイデアを購入できるかどうかを弁護士に研究させ、その結果タレルの作品のアイデアを十数点買いとったのだ。
作品の一つだったスカイルームは、その屋敷の中で実現され、恒久設置された。そこでは、真っ青な空が天井の開口部で切り取られて、あたかも青一色のキャンバスのように見える。その空の光と色は、時間とともに、刻々と変わっていく。夕刻になれば青が赤くなり、やがて星空に変わるのである。それは自然が指揮する光の交響曲なのだ。
その後、この作品は、彼の定番作品となって、世界中に作られるようになった。日本にはスカイルームは三つもある。一つは、越後妻有アートトリエンナーレ第1回展の際に建設された、宿泊できる美術作品「光の館」の天井に仕掛けられてある。また、香川県・直島の地中美術館でも、地底から空を見上げる大理石張りのスカイルームがある。さらに、金沢21世紀美術館にも、恒久設置されている。日本でこの作品がこれほど受け入れられたのは、どこかで自然がすきな日本人の感性に訴えるものがあるからに違いない。
いずれにしろ私にとって、スカイルームはバレーゼが原点である。あのときの不思議な感動は忘れがたい。「アートは極端な物、特別の物でなければ意味がない」と言ったパンザ伯爵の言葉が、今でも思い出される。