3歳の息子を連れて、時々、展覧会に行く。走り回り、なんでも触りたがる彼をつかまえながら鑑賞するのは、けっこう疲れる。でも、たった1点でも「いろんな色があるね、きれいだねー」と目を輝かせてくれれば、それだけでうれしい。
展覧会を観(み)るのが仕事の一部だからというだけではない。私自身、子どもの頃に父に連れられて美術館に行った記憶が鮮烈に残っていて、それが今の自分にとってかけがえのない体験だったという実感があるので、これはと思うものには息子を連れて行くようにしているのだ。
美術館に行きたいけれど、子どもが騒ぐと怒られそうだからと敬遠している人も、まだ多いのではないだろうか。そんな人たちに、もっと美術館に親しんでもらおうという取り組みが始まっている。たとえば赤ちゃんをバギーに乗せて一緒に鑑賞できる「バギーツアー」がそれだ。
私も息子と一緒に、水戸芸術館現代美術センターのツアーに参加してみた。監視や解説を行うスタッフの中で、育児経験や保育士資格を持つ有志のガイドが、親子の興味や年齢に応じてきめ細かく対応してくれる。すっかり慣れて、楽しそうにスタッフと遊ぶ息子。「お母さん、今のうちにゆっくり見ていらしてください」。子連れで気兼ねなく展覧会を鑑賞できたのは初めてだった。
東京都現代美術館でも、乳幼児の親子を対象に「ひよこツアー」を実施して好評を得た。「すべての作品を観なくても良いと思って、子どもの興味を尊重しましょう。美術館は社会的なマナーを身につける練習にもなる場です」と、まず親をリラックスさせるような話をしたという。
マナーを守り、おおらかな気持ちで芸術に触れる。美術館と来館者、双方の工夫と気配りで、「美術館は楽しいところ」と思えるようにしていきたいものである。子どもたちと、美術館の未来のために。