美術館は、国も時代もさまざまなアーティストの、多様な価値観をビジュアルで体験できるところだ。
その体験は旅をするのと似ている。
特に、同時代のアーティストが、一人一人の問題意識や世界観をさまざまな手法で表現する現代美術は、今生きている世界をいつもと違う視点で見るための扉を開く鍵になると思う。「なにこれ?」と疑問を持つことも重要だ。想像力が広がる。
「可愛い子には旅をさせよ」という言葉もある。消費文化の価値観そのものであるテーマパークも楽しいけれど、子どもたちにはぜひ、美術館に行って、価値観は一つじゃないということを体験してほしい。
そんな願いを後押ししてくれる絵本がある。ディック・ブルーナの「ミッフィーのたのしいびじゅつかん」だ。お父さん、お母さんに誘われて初めて美術館に行ったミッフィーがさまざまな作品に出会う。そこには作者ブルーナの、子どもとアートへの愛が込められている。
ちょうどこの絵本と同じように、ミッフィーの問いかけに応じながらアートを観る展覧会「美術館に行こう! ディック・ブルーナに学ぶモダン・アートの楽しみ方」(7月17日まで静岡県長泉町のビュフェ美術館で開催)が全国を巡回中だ。開催館のコレクション作品を中心に構成するので、各館で展示内容が変わる。
私も家族で出かけた。ミッフィー好きの息子は大喜び。また、併設のビュフェこども美術館は、日本には珍しい常設の「チルドレンズ・ミュージアム」で、小さな子どもたちもビュフェの作品世界で思い思いに遊べる。いわばアートのテーマパークだ。緑豊かな丘の上、同じ敷地内にあるヴァンジ彫刻庭園美術館と併せて丸一日楽しめる。息子も芝生の上を思い切り駆け回っていた。
子どもの感性や想像力は、本当におもしろい。「そんな見方があったのか」と、こちらが教えられることも多い。子どもと一緒に観ることで、大人もフレッシュな眼で作品を感じることができる。
今しかできない、子どもと行く美術館の旅。みなさんもぜひ。