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2007.8.8(水)更新  彩・美・風/日本人の誇り それは文化です
彩・美・風
日本人の誇り それは文化です

美輪明宏さん
 私が長崎で被爆したのは10歳の時。地獄絵図さながらの光景は忘れられません。戦時中の日本は軍国主義一色で野蛮そのものでした。「美は軟弱だ。女々しい」という理由で、軍人という国賊があらゆる芸術をたたきつぶしたのです。ご先祖様が千年以上かけて練り上げてきた日本文化や美意識を、たった5年で灰にしたのがあの戦争でした。

 戦前までの日本は、ゴッホやモネ、マネ、チャプリン、アインシュタインをはじめ、世界中の天才があこがれた国でした。ジャポニスムでは、みんな日本文化に脱帽したのです。元禄時代の能衣装にしてもデザインと色づかいの大胆さには、今でも驚かされます。伊達政宗の陣羽織はカラフルな水玉文様を組み合わせた柄で、アール・デコを先取りしていました。

 ユーモアのセンスも日本文化は一流です。昔から、愛らしいものを生み出すのが得意。ウサギやカエルが相撲をとる様子を擬人化して描いた「鳥獣戯画」などはまさにそうです。お化けだって唐傘に提灯(ちょうちん)、一反木綿(いったんもめん)なんていうふんどしみたいなお化けまでいて、幽霊のように怖いものさえ面白おかしく変身させてしまうのです。外国の吸血鬼みたいに「グロ」だけじゃない。この感覚が海外の人々を魅了している日本アニメの世界観に通じているのです。

 何より素晴らしいのは、何でもアレンジしてしまう才能です。中国から漢字を取り入れ、さらに、ひらがな、カタカナを生みだし、今ではローマ字を含めて4種類を使いわけています。その咀嚼(そしゃく)力は、まるで巨大な胃袋みたいです。

 すべての日本人の細胞には脈々と受け継がれる美意識のDNAが組み込まれているのです。ところが敗戦後、文化までもアメリカの植民地と化して、下品な「ストリート文化」に侵されてしまいました。

 自分たちの家に輝く宝の山があるのに、たかだか200年ぽっちの歴史しかないアメリカの物まねをするなんて浅ましいではありませんか。そろそろオリジナリティーに目覚めないとだめです。その気概や誇りがあれば、世界中どこに行っても尊敬される通行手形になるでしょう。

 みわ・あきひろ 
 歌手・俳優 35年、長崎市生まれ。「人生ノート」「ああ正負の法則」(パルコ出版)ほか著書多数。
美輪明宏さん

(2007年8月8日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)


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