挿絵画家の中原淳一さんとは、私が歌っていたシャンソン喫茶「銀巴里」で出会いました。戦後、中原さんが創刊した雑誌「それいゆ」「ひまわり」は、日本の婦女子に、貧しくても美しく生きることを呼びかけて大ヒットしました。「この世の中に、色がなかったら、人々の人生観まで変わっていたかもしれない」という言葉を残しているほど、色彩感覚の見事な方でした。
色の波動が人間に与える影響はとても大きいのです。バブル崩壊前、黒ずくめのファッションや無機質な灰色の建築が街にあふれた時には、今に悲惨な世の中になると予感しました。黒は死や不安を象徴する色、灰色は墓場の色です。申し合わせてもいないのに、世界中でお葬式の時、黒い服を着るのはなぜですか。生き生きと命を持った植物に、黒や灰色のものがありますか。そういう先人の知恵を踏まえないから、経済は破綻(はたん)し、人は心を病むのです。
昔の人は、色を生活の中で生かす知恵を自然と身につけていました。生まれたばかりの子どもを「赤ちゃん」とよぶのは、赤が生命力を象徴する色だからです。還暦を迎えた人間に赤いちゃんちゃんこを着せるのは生命力をよみがえらせるため。頭が痛い人に紫のはちまきをさせ、紫色の布団に寝かせたのは、紫が災厄をはらう色だからです。
難しいことではありません。男性は黒の背広をやめて、せめて紺色にしましょう。青は知性や冷静の色だから感情に流されなくてすみます。何年か前から私が髪の毛を黄色く染めているのは、風水で黄色が金運の色だというので試してみたのです。私の前世が「ピカチュウ」だったからという説もありますが……。
日本には古くから納戸(なんど)色、鶸(ひわ)色、朱鷺(とき)色をはじめ、無数の色があります。色にとても敏感な民族なのです。
洗練された色彩感覚を身につけるには中原さんのデザイン画やマリー・ローランサンの絵を参考にすると良いでしょう。パステルカラーは、精神的に一番良いと言われます。
色によって、人生が大きく変わるということをどうぞお忘れなく。