日本の40〜60代の男性の多くは、文化や芸術と無縁な存在と言っても過言ではありません。美術館や博物館、音楽会場などでは、圧倒的に女性と若者の数が多いでしょう。諸外国では大抵、男女比率は半々です。日本のおっさんたちはどこに行くかと言えば、スポーツランドにゴルフ場、飲み屋といったところです。
ところが日本を支えているのは、このおっさん世代です。戦後の経済成長の中で育ってきたので、すべての基準が「カネ、カネ、カネ」。自動車も建築もファッションも、美しい叙情的なものが求められているのに、金もうけ主義を勝手に押しつけてブームを生み出そうとするから、需要と供給がずれまくっています。
「忙しいから」と、文化や芸術をないがしろにするのは間違いです。私はよく「美は心のビタミン剤」と言っています。忙しい人ほど、心を病まないために、美しいものに触れて心に栄養補給する必要があるのです。
なじみのない方にアドバイスするとしたら、手の込んだ本物の芸術をご覧なさい、ということです。たとえば伊藤若冲や尾形光琳の日本画です。彫刻や陶芸、洋画にしても、手の込んだものは美術骨董(こっとう)品として後世に残ります。球体を転がしたような現代アートが、すぐ忘れられてがらくたになるのは、単なる思いつきで作った手抜きの産物だからです。「新しい。見たことがない」と言われたいという卑しい功名心による偽物の芸術から入るのはおすすめしません。理屈ばかり食わされて、逆に疲れてしまいます。
ただ眺めているだけでなく、絵でも陶芸でも書でも、自分で何かを作り出す作業をやってみることです。才能がないと思っていたけれど、やってみたらまんざらでもなかったという例はいくらでもあります。そしてそれが生きがいになります。その支えがあれば、仕事を辞めても、夫婦のどちらかが先に死んでも、孤独にならずにすみます。絵を描けば、絵の具や画用紙、額縁も売れて、市場の活性化にもつながります。
自分のために、どれだけ余暇をさけるかで、人生をいくらでも華やかに彩ることができるはずです。