僕は今、「路(みち)」シリーズの新作構想の真っただ中にいる。「路」は大学時代から制作している立体アニメーションだ=
写真。台詞や語りはない。大したエピソードもない。学校のクラスの中で言うと、あまり目立たないタイプといえる作品。それは一体どんな作品なのか、はっきりと答える自信がない。けれども確固たる何かはある。
11年前、3年間の浪人の末、東京芸大に入学した。それから1年半、僕は様々な理由から自らの暗闇を端に追いやり、なるべく明るく振る舞おうとしていた。周囲には笑ってくれた人も、そうでない人もいた。からかいの対象になったこともあった。
「3年も浪人して君は一体なにを学んだのだ?」。どう答えていいのか、どうしたいのか、考えても答えが出なかった。その思いは時間とともに、むくむくと入道雲のように膨らんで、僕をのみ込んでいった。
そんな頃、1人の作家に出会った。チェコのアニメーション作家、イジィ・バルタだ。かわいいキャラクターの立体を使った子供向けの作品はたくさんある。しかし、彼の作品は逆だった。おぼつかない動きの人形、意味不明な言葉、デフォルメされた街並み。作家の脳みそむき出しといった世界観と、喜劇とも悲劇ともとれる滑稽(こっけい)さに圧倒された。
僕は、何かと通じ合ったり、受け入れたりするのに長い時間がかかる。だけどこの作品は違った。作家の持つ暗い闇に触れた気がしたのかもしれない。自分が端に追いやった暗闇に触れたのかもしれない。この出会いをきっかけに、僕の立体アニメーション表現が始まった。