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2007.9.19(水)更新  彩・美・風/自分の中に潜む「なにか」
彩・美・風
自分の中に潜む「なにか」

村田朋泰さん
 僕が立体アニメーションを制作するきっかけとなったのは、1人のチェコのアニメーション作家の作品だった。その後、何人かのチェコの作家を知った。イジィ・トルンカ、ヤン・シュバンクマイエル……。

 作品のスタイルは違えど、底に流れる共通点がある。匂(にお)いのようなものだ。どの作品も独自のユーモアがある。侵略の度に変わる言語のこと、母国語は人形劇のみに使われていたこと。1968年の「プラハの春」から、1989年の「ビロード革命」に至る一連の時代。国そのものの悲劇。

 彼らの作品が重い歴史を背負ったものだと言いたいのではない。彼らは、そうしたわかりやすい説明に意味を見いだしていない。「自分とはなにか」から出発し、人間の愚かさ、悲しさ、暗さといった根源的な深みについて問い、さらに上ったところから僕らを見ている。そんな作品だ。

 僕は自分の中にある「なにか」について考える。声を荒らげて主張しなければならないことはひとつもない。だけれど作品はなにかを主張しなければいけないのだろうか、訴えるものがなければいけないのだろうか。

 僕は両親のことを考えた。自分が一卵性双生児だということを考えた。生まれ育った町や、出会った人たちのことを考えた。答えの出ない思い。説明のつかない出来事。思い出すと恥ずかしくなること。人に話してどうなるものでもない、澱(おり)のようなもの。そんなことを作品にすることはできないか。

 試行錯誤を重ね、いくつかの習作を作った。その後、大学の卒業作品として「睡蓮の人」=写真=を作り、大学院修了作品では「朱(あか)の路(みち)」を制作した。主人公の男が抱えている思いを、台詞や語りもなく、目の動きと間、手のしぐさ、それを取り巻く自然現象だけに絞って表現した作品である。

 「自分とはなにか」。それは今でもよくわからない。それでもこの二つの作品は僕の匂いがする作品だと思う。

 むらた・ともやす 
 74年、東京生まれ。映像作家。東京芸大大学院デザイン科修了。数々の賞を受賞し、ミスター・チルドレンのプロモーションビデオを担当して話題に。08年、平塚市美術館で個展開催予定。
村田朋泰さん

(2007年9月19日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)


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