立体アニメーション制作を続けて来年で10年になる。多くの人が、僕の作品をどうとらえているのか。それが気にならないわけではない。けれども、作品というのは、やがて僕自身の手を離れ、新しい物語として創造されていくものだ。それは時として、人の心の中の、ある説明のつかない部分に触れるかもしれない。僕が最初にチェコのアニメーション作品を観た時と同じように。
作品に共感する、あるいは違和感を感じることは、人との出会いに似ている。僕は初めて会った人と、どう接していいのかわからない時がある。そんな時は無理に合わせようとはしない。すぐに結論を出そうともしない。その人が抱える思いや悩みから生まれる優しさやずるさ、軽さや重さを、打ち解けられるまでの長い時間の中でゆっくり感じてゆく。
僕の作品を観た人の中にも、結局は説明のつかない思いや解決できないことを僕が描こうとしていると感じ取ってくれた人がいたと思う。制作を続けてこられたのは、そんな言葉にならない「何か」を自分も抱えながら、僕の思いを感じ取ってくれた人がいたからではないだろうか。
今、目の前に小さなセットと人形がいる。来年の春に平塚市美術館で個展を控えている。4作目となる「路」の新作も上映しようと思っている。これから僕は少しずつ人形を動かす。やがて人形は、少しだけ生きているかもしれないという曖昧な生命を持ち始める。なにもなかったはずの空間に、新たな空気が漂い始める。僕という曖昧な存在、今でも消化できない思い、ぬぐえない孤独感。すべてを抱えたまま、またしばらくこの小さなセットと人形の空間の中で緊張の日々を過ごすことになる。僕はまたドキドキする。(映像作家)
◇10月は女優の中谷美紀さんの執筆です。