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アンセル・アダムズ(1902〜84、Ansel Adams)といえば有名なアメリカの写真家で、雄大な自然を撮らせてこれほどの技巧を持つ人は他にいなかった。
彼はカリフォルニア州のヨセミテ国立公園に足しげく通い、「ハーフドーム」と呼ばれる不思議な形をした岩山の写真を何枚となく撮った。遠景から近景まで全域にピントの合った細密な描写の、完璧(かんぺき)な構図の写真。自然を最も美しい瞬間において捉(とら)えた映像。
ぼくは彼の写真が好きで、代表作「ヘルナンデスの月の出」などいつもほれぼれとして見てきた。
そのアンセル・アダムズについて日本人が知っておかなければならない特別のことが一つある。第2次世界大戦の時、アメリカの日系人約11万人が収容所に入れられた。その一つがカリフォルニア州のマンザナにあって、アダムズはここの写真を撮っているのだ。
撮っただけでなく、日系人に対して彼はとても同情的だった。手紙の中で「人種的な恐怖症や、そこに何か商売の利益を見つけた人たち」によって忠誠心あるアメリカ市民である彼らが収容されるのは憲法違反だと書いている。また、彼は収容されていた宮武東洋という写真家が自由に収容所内の写真を撮れるよう、当局に働きかけてもいる。
ここにマンザナを撮ったアダムズの写真が一枚ある=写真。広い畑で働く人々を遠近法そのままの安定した構図の内に収めている。畝(うね)のあちこちに木箱が見えるから、収穫の時期だろうか。労働者が日系人であることも体型からわかる。
しかしここでもぼくは遠景に惹(ひ)かれる。畑だけでなく、山が美しいのだ。こんな社会的なテーマの写真でも自然をくっきりと美しく入れる。苦労する人々を連山が祝福しているように撮る。
これがアンセル・アダムズだ。