日本庭園に興味はあるけれどいま一つ見方がわからない、といった声をよく聞きます。その理由は「難しくて……」といいます。日本庭園は決してそんな難しい空間ではありません。いくつかの簡単な約束事、つまり築山、樹木、石などが何を表現しているのかということを知るだけで、庭園の世界は大きく開けてくるのです。
長い歴史の中で日本人は、自然をめでながら美しくて心地よい空間を庭の中に作り出してきました。海を表す池庭であったり、苔(こけ)で覆われた築山や石を組んで生まれる雄大な山並みだったり。また身近な山に分け入った錯覚を起こすような、樹木に覆われた雑木の庭や茶庭(露地)など、常に自然を感じることができる空間を生み出してきました。日本庭園とは、自然風景の等倍模型だと感じ取っていただければよいと思います。
私の肩書は「作庭家」といって、主に日本庭園を設計しています。物づくりが幼少の頃から大好きでした。実際の庭造りも手掛け、日本各地にある古庭園の調査や研究で、時代ごとの空間構成や石の配置方法なども調べています。
これらの活動のきっかけは、先々代(重森三玲)、先代(重森完途)の庭造りを見て、何もないところから土を盛り、石を立て、植物を加え、そして最後に砂を撒(ま)いて砂紋を描くことによって、刻々と変貌(へんぼう)していく姿に感動したことです。多くの人たちに日本庭園の魅力や美しさを伝えたいと思ったのです。
庭造りをしている時、土や草木の香り、季節ごとの気候の変化など、常に自然が身近にあり、それらと一体化していくのを感じながら仕事ができます。庭園を形づくる数多くの素材と「会話」しながら黙々と作業をこなしていく。そんな時、生涯の仕事として定めたことに大いなる喜びを感じます。