石は人の顔と同様で、一つとして同じ姿、形のものはありません。そのふぞろいな材料を瞬時に見立てて組み上げていくのが「石組(いわぐみ)」です。私が最も好きな創作行為であり、私ども三代の庭造りの大きな特徴といえます。
石組は、大自然の厳しい山岳風景を構築するのによく使われます。硬い物質であることから不変性、永遠性の象徴とされ、不老不死である仙人が住む蓬莱(ほうらい)山など神仙思想に基づく世界観を表現するのにも用いられます。樹木と違って石による創作は永遠に変化しません。そのことが、石を中心とした創作へ傾倒した理由ともいえます。
単体の石は色や肌の美しさ、自然の浸食による形の面白さがあり、組んで見せる場合は、立てる、横に寝かす、伏せるの三つを組み合わせ、自然の深遠さや力強さを表現していきます。祖父の造った大阪・岸和田城庭園は四方どこからみても正面となるような組み方をし、まさに石組の美を追求した作品。また父の手がけた島根県庁庭園は伝統美を追求しながらも、開放的な空間に石を現代アートのオブジェのような感覚で配置しています。
私の近作に大津市の皇子山駅付近の庭園があります。左右どちらから見ても中心となるように枯滝(かれたき)石組を構成し、連なる低い山並みと水を表す砂利で「静と動」を表現しました。
この庭は急きょ工事日程が決まり、海外出張から帰国早々、作業に取りかからなくてはならない状況でした。本来、石選びは設計者の意図を最大限に引き出すもの。一つずつ本人が探していくのが重要ですが、その時間もありませんでした。親しい造園業者に頼んだとはいえ、イメージしていたものと大きく異なる石と現場で対面し、3日間で組み上げる。小石で山岳風景を組むのを想像して頂ければ分かると思いますが、自然の石は色も形も大きさも異なります。
泣き言いわず、腹をくくって、黙々と石と対峙(たいじ)した時間は、まさに石との真剣勝負でした。