バイク、車、音楽鑑賞、オーディオ、楽器演奏、写真……。学生の頃から様々な趣味に触れてきました。これらと日本庭園は接点がないと思われるかもしれませんが、実はデザインという観点から見ると、大いに関係があるのです。
ホンダの創始者である本田宗一郎氏が考え出したオートバイに「神社仏閣仕様」というデザインがあります。ようやく技術的に世界と肩を並べられるようになった1950年代後半に作られたもので、実際に京都・奈良を訪れ、荘厳な寺社建築からヒントを得たといいます。
日本はあらゆる分野において、デザインのヒントとなる美の宝庫です。古都の世界から啓発されることもあれば、近代化された都市部にも、たくさんのヒントがあります。私は、線の使い方や強弱のつけ方、色の配置など、身の回りにある様々な芸術に接し、そこから触発された感覚を庭園のデザインに生かしてきました。
音楽もその一つで、不協和音の妙味、シンコペーションの面白さにひかれ、ジャズドラムをやっています。音楽の世界で和音や基本の音階練習が欠かせないように、日本庭園も基本を知ってこそ伝統の発展につながります。
一見モダンに思える庭も、基本を習得し、かつ新しいデザインエッセンスに敏感な人が造るものは、意外なほど伝統とモダンの融合ということを真摯(しんし)にとらえながら創作しているのがわかります。古庭園の水、樹木、石組が織り成すハーモニーが、庭園デザインの基本として使われていますが、その一定のリズムやエッセンスを身につけ、現代の感覚で生かしていけばよいのです。
日常の何げないところに隠されたヒントに感銘を覚え、それを生かしていく。それが美しい空間づくりの源になっているといえます。
父とは自身のバイオリン独奏や私との合奏による音符の構想感、さらに楽器の持つ微妙な曲線など、作庭と音楽との近似性をよく論じたものでした。