懸賞サイトは朝日マリオン・コム-懸賞 プレゼント、懸賞 応募、懸賞 旅行
2009.4.22(水)更新  彩・美・風/岡本太郎の芸術論
彩・美・風 バックナンバー    コラムのトップページ   

彩・美・風
岡本太郎の芸術論

瀬戸内寂聴さん
 この世に生まれて、岡本太郎という芸術家に出逢(であ)ったことは、とても有(あ)り難(がた)かったと思っている。

 太郎さんとは、私が彼の母親である岡本かの子のことを小説「かの子撩乱(りょうらん)」に書いた時に初めてお逢いした。書いてもいいか、よければかの子のことを何でも教えて下さいとお願いした。

 その頃、私はまだかけ出しの小説家で、世の中に全く認められていなかった。それなのに、太郎さんはその場で承諾してくれ、「何を書いてもいい。好きなように書け」と言ってくれた。それ以来、いつ逢ってもちゃんと私の小説を読んでくれていて、私が書き易(やす)いように、さまざまなかの子の印象や秘話をさりげなく語ってくれた。

 そのうち、

 「お前さんの方が俺(おれ)よりずっとかの子を深く識(し)っているよ」

 といい、本が出版されると、

 「もう忘れられていたかの子をよみがえらせてくれてありがとう。おかげでかの子の本が売れるようになった」

 と笑い、フランス料理を御馳走(ごちそう)してくれた。

 太郎さんは常々、「人に好かれるようなものは芸術じゃない。いやな絵だ、気持ちの悪い小説だと言われるようなものが本物だよ。芸術家は岐路に立った時、進んで危険だと思う道を選ぶべきだ」と、口ぐせのように言っていた。私は岡本太郎の芸術論に洗脳されて、本気で自分の書きたい小説を書き、散々批評家から叩(たた)かれた。しかしそのおかげで60年近く現役で書きつづけているし、太郎さんの「あらゆることをやる」という思想を受けついで、小説以外にもあらゆることに手を出し、全人間的に「宇宙即自分」という考え方をしようと、今もあがいている。

 行方不明になっていた太郎さんの「明日の神話」が、太郎さん没後に発見された。今、渋谷の駅にかかげられ若い人々にうっとり仰がれている。太郎さんの霊魂は「今頃俺の偉大さに気がついたか」と苦笑しているだろう。

 ◇5月は比較文化学者の四方田犬彦さんによる執筆です。

せとうち・じゃくちょう 
 22年生まれ。作家、僧侶。「源氏物語千年紀」の昨年は講演などで全国を飛び回った。雑誌「the寂聴」(角川学芸出版)を刊行中。
瀬戸内寂聴さん

(2009年4月22日、朝日新聞マリオン欄掲載記事から。商品価格、営業時間など、すべての情報は掲載時点のものです。ご利用の際は改めてご確認ください)


asahi-mullion.comトップページへ
サイトマップ | 会社案内 | 朝日マリオン・コムとは | 姉妹メディア | 会員規約 | 個人情報・著作権
asahi-mullion.comに掲載の記事や情報、写真の無断転載を禁じます。すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。
Copyright 2010 Asahi Mullion 21. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.

懸賞サイトは朝日マリオン・コム-懸賞 プレゼント、懸賞 応募、懸賞 旅行